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真田十勇士
巻ノ五 三好清海入道その二
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「餅と酒を手に入れるぞ」
「それがお望みですか」
 幸村は笑って餅と酒の話をここでも出した清海に問うた。
「清海殿の」
「うむ、そうじゃが」
「より大きなものは欲しくありませぬか」
「より大きなものとは?」
「この勝負に勝って餅と酒は手に入ります」
 このことは確かだというのだ、幸村も。
「しかしそこから先は」
「先?」
「清海殿は今は托鉢やこうした勝負に勝って糧を得ておられるそうですが」
「あと用心棒をすることもある」 
 そうしたこともするというのだ。
「まあ気軽なその日暮らしじゃな」
「左様ですな、何処かの家に仕えられる気は」
「ははは、こんな生臭坊主をか」
「はい、それがし今は家臣を探しています」
 幸村は微笑み清海にもこのことを話した。
「天下の豪傑達を」
「確かにわしは天下無双の豪傑じゃ」
 実際にだ、清海は謙遜しなかった。大きな口を大きく開いてそのうえで大きく笑って応えたところにそれが出ている。
「しかし酒は飲む、遊ぶ、大飯を食らい肉も魚もお構いなしで暴れる破戒僧じゃぞ」
「ですがそのお心は確かですな」
「破戒僧なのにか」
「その目でわかります、曲がったことは嫌いで弱きを助け強きをくじかれますな」
「少なくとも女子供、年寄り、武器を持たぬ者に興味はない」 
 清海もこう答える。
「親兄弟、女房、子供がおる者も出来るだけ殺めぬ」
「悲しむ者がいるからですな、死ぬと」
「暴れるのは好きじゃが涙は大嫌いじゃ」
「そして盗むこと等も」
「おなごにも無理は言わぬ」
 女色にもというのだ。
「少なくとも恥ずかしいことはせぬわ」
「ですな、ではです」
「貴殿の家臣になれというか」
「如何でしょうか」
「面白い申し出じゃな、わしの様な者を誘うとは」
「真田は十万石、決して大きな家でjはありませぬが」
 幸村は前もってこのことも話した、こう書くと確かに真田家は決して大きな家ではない。天下を争う家では到底ない。
「それでもです」
「誘ってくれるか」
「禄は多くありませぬが」
「ははは、わしは銭はあまりいらぬ」
 それはとだ、清海はここでも口を大きく開いて豪快に笑って言った。
「いるだけな、飯と酒さえあればよい」
「その二つならありまするが」
「ならば充分」
「それでは」
「いやいや、わしも仕官は有り難いが」
 この話自体はというんどあ。
「しかしわしは決めておる、わしの主はな」
「清海殿よりも強い」
「わしに勝った者にだけ仕えたい」
 この考えもだ、清海は幸村に述べた。
「だからじゃ、わしを召し抱えたいのなら」
「この勝負に勝ってから」
「そうしてからですな」
「それでどうじゃ」
「わかりました」
 幸村は清海に対して笑顔で即答した。
「それ
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