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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第五話 交渉
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ルマニアですが……元より王としては格下の田舎者。トリステインとガリアが手を組めば、それに異を唱えられる筈もありはしません」
「ほう、ほう。言うではないか」

 晩餐室、いや、ガリアに入国してから一切表情を変えなかったアンリエッタの顔が僅かに笑みの形を作る。
 
「それで、ご返答は?」
「条件は? これほどのものを用意するのだ。余に一体何を求める?」
「わたくしたちが求める条件はただ一つ。“エルフと手を切る”。ただそれだけです。あなたがエルフと手を組んだのも、このハルケギニア全土を己がモノにするためでしょう。なら、それはわたくしたちが用意致しましょう。ですから、即刻エルフと手を切りなさい」
「―――驚いたな」

 切り捨てるように言い放ったアンリエッタの言葉に、ジョゼフは驚いたように目を見開いた。

「いや、元より女傑だと思ってはいたがまさかこれ程とは、アルビオンの一件以降ますます鋭さが増しておるようだ。これはまた恐ろしいっ!」
「了承するということでよろしいですか」

 芝居掛かった大げさな動作を見せるジョゼフに構うことなく、アンリエッタが確認の言葉を告げる。
 だが、ジョゼフは応える事なくニヤリと口元に笑みを浮かべるとアンリエッタにニヤついた目線を投げかけた。

「―――それほど“聖戦”を止めたいか」
「……ええ、勿論ですわ。“聖なる戦い”など言葉だけのもの。どのように言い繕ったとしても、行うのはただの殺し合いでしかありません。結果親が、兄弟が、恋人が、子が死ぬ。後に残るのは大切な人を失った家族。そして悲しみと怒り―――憎しみの感情だけ」

 挑むように目に力を込め、殴りつけるかのような口調でアンリエッタはジョゼフに言い放つ。

「無辜の民が涙を流す事に比べたら、“無能王”を担ぐ程度の屈辱など何の痛痒にもなりはしません」
「……大王となった余が何をするかわからないのにか?」
「その時はその時。こちらも相応の手を取ることになるでしょう。ですが、目に余る行為でなければ、干渉する事はありません。そちらも、折角手に入れた大王の地位を早々に捨てたくはないでしょう」

 アンリエッタの言葉に、ジョゼフは確かにと頭を上下に振った。

「ならば、一つこちらも条件を付けよう。なに、無茶な要求ではない」
「何か?」
「余の后になれ」
「承りました」
「陛下ッ!!」

 今まで黙って耐えていたアニエスだったが、流石にこれは我慢できなかった。
 非難するように、否定するように叫び、ジョゼフに食って掛かろうとするアニエスを手を掲げ制したアンリエッタは、欠片も動揺することなく粛々と頷いて見せた。

「わたくしがあなたの后になれば、この提案を呑むというのならば、是非もありませんわ」

 アンリエッタに制され
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