第29話 Sanction 1
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「覚えがないこと言って話を逸らすな。」
お互いに睨み合い、動かなくなる。
そして、
「ぷっハハハハハハ??」
その静寂を破ったのは一つの笑い声だった。発生源は、赤毛のポニーテールをした三年生。その顔は、心底嬉しそうだ。
「やぁ、あんた面白いね。三年生に対して、そこまで堂々としてる一年も珍しいよ。」
「そりゃ、ここまで堂々と喧嘩売られたら堂々とせざるを得ないでしょう。」
「喧嘩はそっちが先に売ってきたんじゃないのかな?」
「年上ならそれくらい上手く躱してみせろよ。」
赤髪の三年生、アーネットとカズトの視線が交錯し、空気を重くする。今まで笑っていたアーネットも、遂に目つきが鋭くなった。
「あまり粋がるなよ、餓鬼。」
「威張り散らかすな、お姉様方。」
そう言い放った瞬間、アーネットとカズトの姿が消えた。
サテライザーとラナでさえ追いつけない程の速度ということだろう。聞こえるのは、度々ぶつかり合う金属音と、さらなる高みへと登る時の加速音のみ。
ようやくサテライザーは目で追えるようにはなったが、それでもギリギリ残像が追える程度だ。
正に、格上の戦い。
そした、遂に二人のアクセルは止まった。それを止めたのは、銀髪と褐色の肌をもった三年生、クレオだ。
止めたと言っても、カズトのように間に入ったわけではない。アーネットの首根っこを掴み、カズトと引き剥がしたのだ。
「何をしているアーネット。指導する相手を間違えるな。」
「え〜、だってあの子すっごく面白いよ!ヤラなきゃ損だよ!」
「何をヤル気だ何を。まったく……」
ポイとアーネットを放り、クレオが前に出てくる。その拳はラナのと同系統の輝きを持っている。
つまり、格闘スタイルのパンドラ。カズトと戦ったことのないタイプだ。
「そこを退け、一年生。用があるのはサテライザーだ。」
不遜な物言いにカズトは苦笑いしながらも、サテライザーとラナの前に立とうとした。
「待って……」
だが、それを止める声が背後から聞こえる。凛とした、カズトが学園で最も信頼する人の声。
「私が……相手をする……」
「っ!サテラ、あんた正気か??」
サテライザーがボロボロになりながらも、立ち上がりカズトを押しのけ前に出る。その体は、ラナとの決闘で最早瀕死に近い。
「これ、私の問題だ……」
「そんなこと…でも、だからって…!」
確かにそうだ。カズトも分かっているから反論できずにいる。先ほどまでの饒舌さはどこへ行ったのだろう。自分で自分が嫌になっていた時だ。もう一人が立ち上がった。
「それなら、私もでありますね。」
浅黒い肌を持った、サテライザーと同等以上の死闘を繰り広げた、拳法使い。
ラナ・リンチェンその人だった。
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