2部分:第二章
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いに行くぞ。宝と共にな」
「はっ」
こうして光は専緒に会うことになった。無論伍子胥も同行している。二人が辿り着いたのは一件の静かな家であった。到底屋敷と言えるものではなかった。
「ここなのか」
「はい」
伍子胥の部下が光に答える。先導は彼が務めていた。
「この家でございます」
「みすぼらしい家だな」
「士は住んでいる家で決まるものではありません」
伍子胥が主に顔を向けて述べた。
「心で決まるものです」
「そうだったな。では心を見たい」
「そうですな。しかし」
「おや」
ふと彼等の後ろから声がした。
「見たところ高貴な方々のようですがどうしてこちらに」
「おおっ」
「専緒殿か」
二人は笑顔で声のした方を見た。するとそこに一人の粗末な身なりをした男がいた。
ごく有り触れた漁師の格好をしている。顔も身体も引き締まっていて精悍な印象を受ける。黒い目には強く鋭い光がありそれを見ただけで彼が只者ではないことがわかる。鼻が高くそれが彼の顔を立派にみせている。
とりわけ特徴的なのはその手であった。異様なまでに長く、鍛えられていたのだ。
「何故私の名を」
その男専緒は自分の名を言われたのをいぶかしんでまず二人に問うた。
「御存知なのですか?」
「御名前は常々聞いております」
「それでこちらに参りました」
「はて」
名前を聞いていると言われてさらにいぶかしむ専緒であった。
「私の名前をですか」
「そうです」
二人はまだ答える。
「それが何か」
「それは妙なことです」
専緒はそのいぶかしんだ顔でまた述べるのだった。
「私のような者が名を知られているとは。人違いでは?」
「いえ、違います」
伍子胥がそう彼に申し出た。
「私の名は伍子胥」
「伍子胥」
その名を聞いた瞬間専緒の表情が一変した。警戒がそこに見られた。
「貴方がですか。あの」
「私の名は御存知でしたか」
「はい」
こくりと頷いて答える。見たところ表情には複雑なものがある。伍子胥という人物の能力と人柄、両方を知っているからこその顔であるのがわかる。
「御名前は常々御聞きしています」
「それはどうも」
「さすればそちらの方は」
次に伍子胥の隣にいる高貴な服の男に顔を向けた。
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