1部分:第一章
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のであった。
「ふむ、やはりのう」
城にある自身の屋敷の庭に移された老木を満足した顔で見ている。
「この木はやはりここにあってこそじゃ」
「いや、全く」
「その通りです」
側の者達がそれに相槌を打つ。彼等にとってはこれも仕事なので特にそうは思っていない者もいる。三成もそれは気にしてはいなかった。
「そうじゃろう、治部よ」
「そうですな」
三成は表情を変えず秀吉に応えた。
「確かに悪くはありません」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
「ただ。一つ思うのですが」
「むっ!?何じゃ」
秀吉はそれを聞いて三成に顔を向けた。そうして彼に問うのであった。
「この木はここにいて幸せなのでしょうか」
「幸せか」
「はい。今ふと思ったことなのですが」
そう秀吉に述べる。
「木がそう思うと考えるのは。いささか滑稽でありましょうが」
「ふむ。それは少しな」
秀吉もこれには頷くことはなかった。彼の知恵をよく知ってはいるが。
「的外れではないか」
「左様ですか。それではここにあって特に困ることはありませんな」
「わしはそう考える。それはそうとしてじゃ」
ここで秀吉の言葉が景気よくなった。
「酒はどうじゃ。よいのを貰ったのじゃ」
「酒をですか」
「うむ、太夫からな」
福島正則のことである。秀吉にとっては数少ない子飼いの武将の一人でもある。なお三成とは秀吉の死後激しく対立することでも有名である。
「わしに献上してくれたものじゃ。どうじゃ」
「そうですな。是非共」
三成もそれには少し笑顔となって頷いた。酒は嫌いではない。飲まれる性質の男ではないがそれでも好きかというとどちらかというとそうであった。だからこそ断らなかった。
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