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バーチスティラントの魔導師達
猫目
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に見ていたが、その背後にとある気配を感じてほくそ笑む。
「悪い人には攻撃する、とかね。」
「あー猫パンチか!?あれ威力無いところがまた可愛いんだよなぁー!!」
うんうん、と頷く青年に………。

垂直に拳が下ろされた。

「い゛ってぇーーーーー!!!」
ごつっ、と鈍い音が聞こえた。青年の後ろにいたのは、地下書庫にいたはずの金髪の少女である。
青年はまだ笑顔だが、少女は青年を殴った方の手を涙目で振っている。
「レリー嬢、猫パンご馳走様でした!!手大丈夫っすか!?」
「う、うるさいうるさい!このくらい大丈夫だもん!!」
必死に後ずさる。無駄に敬語で接された分、警戒心が高まったようである。
「うう〜………、さっさと帰りなさいよこの猫目…………!!」
「それは無いぜれりにゃん!これでも客人だぜ!?」
「誰が『にゃん』よ!?あなたに出す紅茶なんて1滴も無いわ!!!」
「んな堅いこと言うなって〜!フィアンセが遊びに来たから照れてんのは分かってるからさ〜!」
「照れてないし婚約もしてない!!近寄らないで!!」
全力で後ずさったのち、少年の後ろに隠れる。若干少年の方が身長が高いので、少女にとっては絶好の壁になるのだ。
壁にされた少年は困った様子で、青年に話しかける。
「その辺にしといてください。あと妄想も程々に。」
「妄想扱いとはひでーな…。あれか、傅けばいいのか?」
「そういう問題じゃないと思いますが?」
そんな掛け合いをしていると、外で馬の嘶きが聞こえた。それが何かの合図だったらしく、青年は途端にまじめな顔つきになる。
「やべ、イライヤさん帰ってきたみたいだな。そろそろ行かないと。」
この青年、勝手に屋敷に侵入している上に人の娘を婚約者扱いしているのである。何を言われても雷を落とされても文句は言えない。それに、青年自身あの司書の女性は苦手なのだ。
「あの人、頭いいのは分かるけどさ…。いまいち、人っぽくないよな。」
「…どういうことかしら。」
むっとした様子で少年から離れた少女が尋ねる。すると青年は逆に問いかけた。
「レリー、毎日が楽しいか?」
「え………。別に不満とかは無いけど…。」
その少女の答えに、青年は困った顔をした。しかし笑って、
「なら知る必要は無いぜ。………なぁ?」
少年の方を向いた。
「さーて、無駄話してる時間はいよいよ無くなった。じゃ、また今度!」
そうにこやかに駆け出し、思案顔の少年の脇を通る時。
「お前は、どうだかな。」
そう、聞こえた。どういうこと、と振り返ると扉は開け放たれ、馬に乗った青年が森に消えていくところだった。
「もうっ、本当にしつこいんだからあいつ!」
「……………そ、そうだね…。」
先程の言葉の意味を考えつつ、少年と少女は地下書庫へ戻っていった。
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