猫目
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"ダリスティン"の少女が保護された、その約1か月後。一部の魔導師たちが集まり古書店で話し合いが行われると伝達があった。元祖"バルニフィカス"を創造したフルビアリス家も例外なく、その集まりに出席することになった。いつもなら司書とその娘なのだが、今回は娘はお留守番のようである。
「珍しいね、母さんが姉さんを置いてくなんて。」
「ええ。…それほど重要なんじゃないかしら。」
「だよね………。姉さんはもう立派な魔導師かもしれないけど、大人ではないし。」
「それは皮肉なの、世間話なの!?」
2人しかいない非日常にもかかわらず普段通り書庫でやいやいと話していると、エントランス方面から扉が開けられる音がした。
「ん…?母様が帰ってくるには早すぎる気が………?」
「…僕が行ってくる。」
未来の司書に何かあったら、母親に何と言われることか。訪問者が人間でないことを祈りながら少年は階段を昇って行った。
「はーい、どちら様ですか………ん?」
確かに扉の開いた音がしたのだが、そこにいたのは1匹の黒猫だった。猫1匹が容易く開けられるほど、玄関の扉は軽くない。不審に思いながらしゃがみこんで手を伸ばすと、黒猫は優雅な歩調で近寄ってきた。すりすり、と少年の手に頭を撫でつけると膝に飛び乗る。
「………随分人慣れしてるね、君。」
ぐるる、と喉を鳴らす様子を見てぽつりと呟く。すると突然、首元辺りがくすぐったくなった。
「何!?ちょっ、まっ、やめてってば!!」
しっ、と首の後ろを手で払うと、頭の上に何かがちょこんと乗っかったような重量感を感じた。恐らく、ネズミやハムスター系の小動物だろう。
「これ、姉さんにどう説明すれば………。」
「フィアンセが遊びに来たぜ、って言えばいいのさ。」
声の聞こえたほうを向くと、2階から満面の笑みで顔を出す青年の姿があった。
「よーぅアレン、元気に執事やってっか?」
「………誰が誰の執事だと?」
「んなもん、鳥籠の中のお姫様のに決まってんだろー?」
「地下書庫は鳥籠じゃないよ………。」
いいから降りてこい、と目で伝えると青年は手すりから飛び降りた。あちこち跳ねた黒髪に、緑色の猫目。何となく少年の膝の上の黒猫に似ている。
「おー、ルルーに懐かれたか!こいつ可愛いだろ?」
「まあ、確かにね。ルルーって言うんだ?」
「正確には『ルルーシュ』だがな。」
そう言って青年はにやっと笑う。この後の少年の反応が楽しみだ、と言うように。
少年は軽く青年を睨みつけ、少し怒りを含んだ口調で言った。
「ウィル、その名前…『レリーシェ』の男性名でしょ………!」
「お、せいかーい!だって猫っぽいじゃん。」
「どの辺が!?」
「自由奔放、懐いた人には寄っていく、しゃーって怒る、エトセトラ・エトセトラ。」
ししっ、と笑う青年を鬱陶しげ
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