第十三夜「花火」
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何も考えていなかった、あの頃の夏。
僕らは刹那を生きるだけで良かったんだ。
その時までは…
さぁ、語ろう。あの青春の一頁。
通り過ぎて逝った過去の物語を…。
* * *
「あっちぃ〜っ!」
セミの声が否応なしに飛び交う八月上旬。僕は高校生活最後の夏休みを満喫していた。が…エアコンのないこの部屋は、朝十時ともなれば蒸し風呂のような暑さとなって、とても寝てられなかった。
「仕方ない、起きるかな。」
のっそりとベッドから這い出て、眠気覚ましに顔でも洗おうと洗面所へ向おうとした時…。
―ピロロロロ…―
不意に携帯が鳴った。見ると、親友の順平からだったので、仕方無く…着信ボタンを押した。
「よっ!起きてっか?」
今日はまた、随分とハイテンションだなぁ…。
「ああ、起きてるから出たんだ。で、何の用だ?」
この暑さに叩き起こされたため、僕は少しイラついていた。
「淳、そんな冷たく言わなくってもよぅ…。」
「で、用は何なんだ?」
「あ、そうだ。お前さ、今日河川敷の花火大会行くだろ?」
言われるまで忘れていた。別に興味もないので、どうでもいいんだけど。
「そう言えば、そんなもんがあったな。別に行かないけど。」
そう順平に伝えると、順平は苦情を申し立てた。
「えっ!?そりゃ困るっ!どうせ暇してんだろ?オレらと一緒に行かね?」
…オレ“ら"?
「他に行くヤツは、どれくらい居るんだ?」
「えっとな、友仁のヤツに友仁ん彼女の弥生ちゃんだろぅ、後は弥生ちゃんの友達の明美ちゃんに、そして美雪が来るぞ?」
それを聞いて僕は言った。
「順平くん?きみってば、また僕も来るって言ったんだね?」
携帯の向うで、順平がバツの悪そうに「そう言わねぇと、美雪のヤツ出て来ねぇじゃん。」と、呟いた。
美雪は、僕と順平の幼馴染みだ。保育園の時からこの三人はいつも一緒だったけど、高校は別々になった。
美雪はミッション高校に入ったが、なんでも母親の母校だと言うことらしい。順平は、陸上の強い高校を選んで入った。
「やっぱなぁ。お前ってば、春にも似たようなことを…」
「止めろっ!その話しは。過ぎた話しだ。もう何も言うな!」
順平は美雪のことが好きなんだ。気付いてないのは当の美雪だけ。なんか哀れだよなぁ…。
「分かった。じゃあ付き合うことにするか。で、何時に何処へ行けばいいんだ?」
順平のために一肌脱ごうじゃないか…。
「よっし!じゃあ六時半に三河神社の鳥居の前で!」
「オイッ!それじゃ人がごった返してて、見つからないんじゃないのか?」
こう問った僕に、いかにも名案と言わんばかりに言った。
「大丈夫っ!みんなには風船持たせっから!」
うち
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