9部分:第九章
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第九章
「皆剣を持ちなさい」
「城内での戦いですね」
「その通りです。私もまた」
その手に持つ剣が輝いたように見えた。まるで夜の中の月の様に。だがその輝きは月なぞ比べ物にならないまでに眩く、そして危険な光であった。
「参りましょう」
「わかりました。それでは」
「はい」
カテリーナは応えた。こうして彼女もまた剣を手に敵に向かうのであった。
次の日からチェーザレは軍を城内に雪崩れ込ませた。城壁も濠も無力なものとされたカテリーナの軍はこれを防ぐことができず容易に雪崩れ込まれてしまった。
「降伏するならば命は取らぬ!」
チェーザレは軍を突入させる直前に城内のカテリーナの兵士達に対してそう言った。
「何っ!?」
「私は決して無駄な血を欲してはいない。諸君等の命に対しては何の興味もない」
「本当か?」
「どうかな」
「降伏したいのならば武器を捨てよ。そして戦場を去るか我等につけ」
「どうするよ」
ここでカテリーナの軍に異変が起こった。ここにも傭兵がいた。傭兵は報酬や戦局次第で容易に寝返る存在である。チェーザレもカテリーナもそれはわかっていた。だがそれでも彼等を使うのがこの時の戦争であった。だからここでも彼等は当事においてはごく普通の行動に出たのであった。
「それじゃあいいか」
「ああ、そうだな。公爵様につこう」
こうして信じられないまでにあっけなく多くの兵士達が抵抗を止めた。城塞の四つの塔のうち二つがそれでチェーザレのものとなってしまったのだ。
「これで決まりですかね」
攻撃を仕掛けるチェーザレの軍勢を見ながらリカルドがチェーザレに言ってきた。彼等は今馬上にあった。ミケロットもそこにいる。
「さて、それはどうかな」
だがチェーザレはまだ完全な勝利を掴んだとは思っていなかった。冷徹なまでに落ち着いた目で城を見ていた。
「まだですか」
「そうだ」
彼は答えた。
「伯爵夫人もそう簡単には膝を屈したりはしまい。戦いはまだ先だ」
「それでは」
「そうだ、我々も行こう」
チェーザレはそう言って馬を進めてきた。
「よいな。そして」
「はい、伯爵夫人を虜に」
「火曜日までにだ」
彼等もまた城内に入った。既に城内は修羅場となっており剣を手にした激しい戦いが行われていた。
血飛沫が飛び腕や首が舞う。カテリーナもまたその中に身を置き円月の刀を振るっていた。
今また一人の兵士がカテリーナの斬撃の前に倒れた。彼女は倒れたその兵士を前に笑うこともなくまた次の敵を探していたのであった。
「どうしたのですか?来ないのですか」
周りを取り囲むチェーザレの兵士達に対して問うてきた。
「この私を倒すか捕らえれば恩賞は思いのままだというのに。臆したというのですか」
「いや、それは違いますな
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