第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十七話 凶夜の警鐘 肆
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あんた達の方がずっと間抜けよ」
幽香の呆れとも嘲りとも取れる表情と言葉に、鬼の衆の何人かが色めき立つが、
「………まぁ確かにあんたの言う通りだね、でもね――――こっちにも事情があるのさ」
自嘲気味に口元を歪ませながらも、勇義の瞳には決意を秘めた力強さが宿っており、それを見た幽香を始めとした面々は気を引き締めた。
「そういえば、萃香から何も聞いてないのかい?僕としてはここで君達が百鬼丸を裏切ってくれる――――そんな劇的な展開を望んでいるんだけど」
虚空の言葉に勇義は小さく反応を示すが、
「………悪いけど何も聞いてないし、後…あんたの望みは叶えてやれないね」
冷静な口調で虚空の要望を否定する――――が、当の虚空は然程、というより全く気にもしていなかった。
「そっかそっかそれは残念だな〜、じゃぁ仕方が無いし――――相手してもらおうかな?」
そう言うと虚空は「傲慢」と呟き小太刀を顕現させると、まるでお手玉でもする様に左右の手を行き来させ弄ぶ――――鼻歌交じりに。
その様を見て勇儀は目の前の存在を測りかねていた。
一体何を考えているのか?そもそも本気で自分達と事を構えようとしているのか?と。
勇儀の疑念は尤もな事だろう、虚空達は戦力的に見ても圧倒的に少なく不利だ。ルーミア・幽香や天魔を始めとする天狗衆合わせて五十ほどしか居ない。
逆に勇儀側は鬼の衆で既に五十を超えており、加えて砦から続々と有象無象の妖怪が現れ、その総数は軽く二百に迫っている。
その状況を前にしても虚空の表情や動作には乱れや焦りを感じる事が出来なかった――――故に勇儀は思ったのだ、
「……まさか、正面からぶつかり合ってあたし達を倒せる自身があるのかい?そうだとしたら中々漢気があるじゃないか」
自力への信頼、自負、それが在るからこそ平然としていられるのだと――――目の前の存在はそれだけの強者なのでは?と。そういった正面から正々堂々とした人物は勇儀個人としては好む人種ではある、しかし――――
「ハ……アッハハハハハハッ!!無いよそんなモノは!それに正々堂々、みたいな事はこの世で僕ほど見合わない奴は居ないよ!」
勇儀の言葉に虚空は腹を抱えて笑いながら全否定し、ルーミアと幽香も勇儀のそんな勘違いがツボにハマったらしく必死に笑いを堪えていた。
「僕達がこの場所で悠長に君達を待っていたのは余裕や自信があるからじゃなくて――――此処じゃないと都合が悪いからさッ!」
そう言い放つと虚空は手に持つ傲慢を夜天に向け振りかざす――――まるで交響曲の口火を切る指揮
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