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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
五十七話 凶夜の警鐘 肆
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を絡ませ組み上げる――――言葉にするとこの位、単純な作りなのだ。
 結界を解除すると言う事は、扉の種類を特定し鍵を作り開錠する作業だ。高度な――――つまりは組み合わせが複雑なモノほど扉の特定と鍵の制作が困難になる。
 しかし製作者本人にしてみれば、自身が組み上げた結界の解除というのは出口を知っている迷路と同じ――――故に解除にさほど困難は無かった。(むし)ろ出来ない方が問題になる。



「これで多少は楽になるかな?」

 この破壊を引き起こした張本人である虚空は眼下を眺めながら独り言の様にそう呟いた。

「でも良かったの、初っ端から大技使って?もう使えないんでしょう?」

 虚空の能力の一つである『暴食(ベルゼブブ)』を初めて見た幽香や綺羅、そして天狗達は唖然としているが知っていたルーミアは冷静であった。

「別に構わない、って言うかどうせ乱戦になったら使い道がないからね〜使える時に使った方が得でしょ」

 利点と欠点が明確に出る虚空の能力――――特に暴食(ベルゼブブ)憤怒(サタン)の一番の欠点は“敵・味方の識別が出来ない事”である。
 一度発動させるとその猛威は無差別に周囲へと向けられる、故に集団戦にはとことん向いていない。虚空の発言通り使える状況でさっさと使った方が有用なのだ。

「あぁでも、囮として幽香を突っ込ませて敵が集まった所でドーン!っていう作戦も悪くなかっッッ!?!?」

 適当な作戦を口走った虚空に背後から幽香の蹴りが頭部に炸裂し、虚空は危うく戦闘前に戦闘不能になる所だった―――――自業自得だが。

「あらこんなか弱い乙女を囮に使う、とか聞こえたんだけど……空耳よね?」

 微笑みを浮かべながら虚空を首を締め上げる幽香を見て周囲は同じ感想を抱いていた――――こんな凶悪な“か弱い乙女”が居る訳が無いだろう、と。
 
「ば、場を和ませる為の冗談なのに〜」

「和ませたかったらもっと面白い事を言いなさいな!」

 虚空の言い訳を幽香は正論でねじ伏せる、もっとも今のやり取りで全員の緊張が解れているのは事実なのだが。

「……間抜けな連中だね、襲撃しに来ておいて漫才とは――――それとも、あたし達が嘗められてるのかね?」

 鬼の衆を引き連れ、接近してきていた勇義は間抜けを曝す襲撃者達に呆れを宿した視線を向けながら嘲りの言葉をかけた。
 襲いかかっておいて、敵の眼前でノウノウとしているのだから呆れるのは当然であろう。

「嘗めてなんかいないよ、こう見えても結構真面目なんだ」

 幽香に締められていた首を擦りながら、虚空は何時もと変わらない――――裏表が読めない笑みを浮かべ勇義達と向きあった。

「間抜けねぇ〜、私から言わせればあんな奴(百鬼丸)に付き従ってる
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