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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
五十七話 凶夜の警鐘 肆
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飲み込まれた、と言いますか……アッ!それから結界が消滅しましたッ!」

「それを先に言いやがれッ!…………あの結界を破るとはな、何処のどいつかは分からねぇが全く面倒事が雨霰(あめあられ)だな――――おい勇儀、敵襲だお前等で片付けてこい」

 状況を把握した百鬼丸は唐突にそんな事を口にするが、

「……あんた馬鹿じゃないのか、この状況であたし達があんたに従う訳が無いだろうッ!」

 勇儀の言う通り、すでに敵対を宣言したも同然の鬼の衆が百鬼丸の命令に従う道理等ないだろう。そんな事を口にした百鬼丸自身もそれは百も承知である――――故に彼は、

「交換条件だ、侵入者を排除出来れば――――“コイツ”の命を保障してやるよ」

 足元の萃香の髪を掴み、持ち上げながら勇儀達にそんな提案を――――否脅しをかける。彼女達にとって今の萃香は足枷であり、何より譲れない存在だ、それは双方の共通する事実だった。

「テメェェェェッ!」

 怒りを隠そうともせず勢い任せに飛び掛かろうとする王儀の行く手を勇儀の手が遮る。不満げな王儀の視線を受けながら、

「…………鬼としての矜持くらいは残ってるんだろうね――――“約束”は守んなよ」

 瞳に業火の如き怒りを灯しながら静かな口調で百鬼丸に問う勇儀に対し、

「あぁ、俺も鬼の端くれだ“嘘は付かねぇ”よ」

 百鬼丸は薄ら笑いを浮かべながらそう答える。
 彼の言葉が虚か真か、確かめる術は無く――――どちらにせよ勇儀達に取れる選択肢は無かった。

 百鬼丸に背を向け、広間を出ようと入り口に向かう勇儀はその寸前に振り返り、

「…………外の連中の次は――――お前だ百鬼丸、覚悟しときな!」

 それだけ吐き捨てると足早に通路へと消えていった。

「覚悟、ねぇ……おい!砦に残ってる連中も出撃させろ!」

「え?は、はい!」

 事の成り行きに付いていけていなかった鼠妖怪は百鬼丸の一喝に飛び上がりながら返礼すると脱兎の如く部屋を出ていった。
 一人残った百鬼丸も萃香を連れ部屋を後にする、状況の慌ただしさにも関わらず彼の顔には喜悦が浮かんでいた。




□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■




 砦前に広がっていた森が、まるでナニかに喰い千切るられたかの様に数百mにも(わた)ってほぼ円形に抉り取られていた。
 例えるならばその様は、広大な森に巨大な流星が墜ちた跡である。そんな惨状の場に居合わせた存在にその破壊から逃れる術は無く、先ほどまで蠢いていた異形達の殆どが消滅していた。


 この一帯を覆っていた結界は綺羅により数分もかからず解除されていた。
 結界とは『扉と鍵の集合体』の様な物である。数種類の扉と鍵
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