第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十七話 凶夜の警鐘 肆
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砦を奔り抜ける轟音は、まるでこれから起こる事への警鐘の様で――――――――
石作の通路を駆ける一団の影。
勇儀を先頭に、弟の王儀と鬼の衆が砦の奥へと猛進していた。
先ほどから続いている砦を揺るがす衝撃が、砦の内部――――萃香が向かったであろう百鬼丸が居る広間の方から伝わってきているからだ。
一体何が起こっているのか?――――確証は持てていなかったが勇儀には予感が、否確信に近いものがある。
それは――――萃香が百鬼丸に戦いを挑んだ、という確信が。
そう思う勇儀の胸中には二つの感情が渦巻いていた。
何故一人で背負い込んだ?アレの異常さは萃香も知っている筈だ、何故自分に何も話さず一人で挑んだのか、と。
何故気付いてやれなかった、アイツが今の状況に責任感から負い目を感じていた事を知っていたのに!相棒として、友として気付いてやれなかった自分が腹立たしい、と。
起こってしまった事はもうどうしようもない――――なら今出来る事をする為、勇儀達は百鬼丸への反抗を決意し砦奥へと突き進んでいた。
今は亡き御頭――――萃香の父であり、ならず者と遜色無かった自分達に規律と誇りを与えてくれた彼の仇を討つ為、そして友である萃香を救う為に。
通路を向けた先、大広間に到着した勇儀達の目に飛び込んで来たのは――――部屋全体に広がる破壊の跡と広間の中心部に立つ傷だらけの百鬼丸。
――――そして百鬼丸の足元に倒れ伏す萃香の姿だった。
「……おいおい萃香よ〜そんな身体で俺に挑んで来たのか?嘗めんのも大概にしろよ」
苛立たしげに百鬼丸は倒れている萃香の頭を擦り付ける様に踏み付ける。
百鬼丸の言う通り萃香は真面に戦える身体ではなかった。
紫との一戦で受けた刀傷が主な原因ではあるが、実はこの傷ただの刀傷ではない。
紫が戦闘用にスキマに放り込んでいる刀剣全てに“退魔術式”が施されている。
妖怪退治を生業にしている退魔師や陰陽師等は、実は自身での戦闘行為は意外としていない。
要は“妖怪を退ける事”を主題としている為であり、実際の彼等の主な収入は“退魔術式”を施した札や武器の販売である。中には物好きや戦闘好きな者もおり、妖怪を討伐に掛かる輩もいるが。
ちなみに虚空が妖怪退治で討伐をやっていたのは手っ取り速いから、と言った単純な理由からである。
博麗も例に違わず殆どの収入は結界の札やお守りの販売であり、直接妖怪を討伐する事は少なかった。七枷の郷に来てからも有償で術式付与を行っていたが、虚空に家賃代わりとして紫の武器に術式付与やってもらっていた。
一つ施すのもそれなりにお金が掛かるにも関わらず無償で数十本の刀剣に術式を施した綺
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