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女傑
3部分:第三章
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ち政治家であった。陰謀や暗殺も教会では日常茶飯事であった。そもそもボルジア家にしろそうであるしあのメディチ家も教皇を輩出している。陰謀渦巻くのが教会であったのだ。
「誰だ?」
「公爵と対立している枢機卿も多かったよな」
「そうだな」
 ボルジア家そのものが敵が多い。ホワンもまた例外ではなかった。
「その中にいるのか?」
「いや、待て」
 これには懐疑的な声が出て来た。
「それなら教皇様を直接狙わないか?」
「教皇様をか」
「そうだ。どうせやるならな。も若くは」
「ヴァレンティーノ枢機卿」
 チェーザレの名が出て来た。
「どちらかだろう、狙うのは」
「そういうえばそうか」
「ボルジアといえばやはりあの二人だからな」
「そうだ。あの二人を狙うよな」
 人々はここでホワン暗殺に政治的な理由を外しかけた。
「無理かどうかは別にしてだ」
「政治的にか」
 しかしこの言葉に反応を示す声もまただ出て来た。
「どうした?」
「やっぱり政治的だよな」
「何を言っているんだ?」
「それだ」
 声の中の一つが言うのであった。
「政治的な理由で利益を得ている人間」
「ううん」
 そう言われても容易には考えが及ばない。
「しかも」
「しかも?」
「公爵を殺してもだ」
 何か話がさらに物騒になっていっていた。
「教皇様の怒りから身をかわせる人間だ」
「教皇様の怒りからか」
「そうだ。教皇様は犯人を御存知のようだしな」
「犯人を既に御存知で」
「だが何もしない」
「誰だ?」
 彼等は考えた。
「教皇様の怒りから身をかわせる程の人間となると」
「かえって限られるぞ」
「そして今得をしているとなると」
「おい」
「ああ」
 声達は急にあることに気付いた。
「間違いない」
「そうだ、答えは一つしかない」
 彼等は遂に全てを察した。答えはそこに集まっていた。
「そういえばな」
 そして一つ話が出て来た。
「教皇様はあの方には一言も声をかけられなかった時があったよな」
「そうだったな」
「事件のすぐ後だったな」
「それだな」
 もうこれでおおよそのことはわかった。言わずともだ。
「間違いないな」
「道理で」
 答えは次々にはっきりしたものになっていく。
「そういえば幼い頃妹君の取り合いもされていたそうだな」
「そうらしいな」
 ボルジア家の娘といえばあのルクレツィア=ボルジアである。美貌で知られ今でもその名を残す永遠の美女である。その人物については様々な意見があるが一つだけはっきりと言われていることがある。絶世の美女であったことである。今も残っている肖像画にもそれははっきりと出ている。
「やっぱり間違いないな」
「確実だな」
「しかしだ」
 声達はさらに言い合った。

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