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女傑
2部分:第二章
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公の爵位を与えられた。世俗の権威も名声も彼のものであった。
 だがそれはチェーザレが欲していたものであった。そもそも信仰心なぞない彼は教会での地位にも名声にも何ら関心を抱いてはいなかったのである。彼の野望はイタリア統一であった。だがそれを為しえるのはホワンであった。つまり彼はホワンを消してその地位を取って代わる根拠があったのである。
 ホワンはこの時より二年前に謎の死を遂げていた。暗殺であった。ティベレ河に浮かんでいた河の泥にまみれた傷だらけの遺体が彼であった。かつての美男子もこうなっては何の面影もなかった。
 彼の暗殺を聞いた父教皇は取り乱した。そしてすぐに犯人の捜査を開始した。
「万難を拝し犯人を捕らえよ!」
 そこに教皇の怒りと報復の感情があるのは明らかであった。右手に奸智、左手に謀略。スペインからやって来てボローニャ大学で哲学、法学、神学の三つの博士号を手に入れた大学はじまって以来の秀才と謳われた彼の頭脳は信仰ではなくそうした陰謀に向けられてきた。同時に彼は好色であり狡猾で欲深い人物であった。しかも暗殺を常とする残忍な面も強かった。これはチャーザレにも色濃く受け継がれていたがこの時はその残忍さが特に強く出て来た。
「犯人はすぐに見つかる」
「そして惨たらしく処刑されるだろう」
 誰もがそう思った。すぐにめぼしい人間が多数挙げられた。
 これが実に多かった。そもそもボルジア家というのは謀略でのしあがってきた家である。それだけに多くの敵を持っていて怨みも買っていた。ホワンとて例外ではなく彼自身も敵を多く抱えていた。容疑者はそれこそ山の様にいた。
 大勢の者が取調べを受けたが次々にその潔白が証明された。こうして容疑者は次々に減っていった。

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