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左慈
4部分:第四章
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出て来た。
「ええい、防げ!」
 曹操はそれを見て叫んだ。
「構わぬ、斬れ!」
 そして自ら剣を抜いて斬りつけた。曹操は剣も優れていることで知られている。だがそれでも左慈は生きていた。どの左慈もそれは同じであった。
「ははは、明公、わかっておられるのではないですかな」
 鶴の上にいる左慈がそれを見下ろして笑った。
「私は剣では死にはしませぬぞ」
「ぬうう」
 曹操は剣を持ったまま彼を見上げて唸った。怒りで顔が紅潮しているがどうにもなるものではなかった。
「貴様、降りて来ぬか」
「それはどの私のことでございましょう」
 左慈はそう言って笑った。
「ここに五百人程おりますが」
「まだ言うか」
「言うも何も左慈は私ですが」
 そこで下にいる左慈の一人がこう言った。
「私もです」
「私も」
「私達は全員左慈ですぞ、明公」
「どうなさるのですか」
「ええい、黙れ」
 曹操は怒りを爆発させた。そしてそう叫んだ。
「こうなっては勘弁ならぬ。今ここでこの私の手で成敗してくれる」
「私をですか?」
 一人の左慈が彼に問うた。
「そうだ」
 曹操は答えた。
「私をですか?」
 別の左慈がそれに答えた。
「そうだ」
 曹操はまた答えた。
「当然私もですな」
「無論」
「私も」
「だから言っておろう」
 語気を荒わげて叫んだ。
「貴様等全員成敗してくれようぞ。さあ大人しくせよ」
「ははは、明公も冗談がお好きな方ですな」
「何っ」
 そう言った鶴に乗る左慈を見上げた。
「私は死なないというのに」
「まだ言うつもりか。では貴様は何なのだ」
「私ですか?」
「そうだ」
 鶴に乗る左慈に対して問うた。
「貴様は人ではないとでもいうのか」
「人ですぞ、私は」
 彼は穏やかに笑ってそう答えた。
「それは間違いありませぬ」
「では何故死なぬのだ。人であるというのに」
「それは私が仙人だからであります」
「それはわかっておると言うたであろう」
「ならもう言うまでもないことですが」
 彼は静かにこう言った。
「私は仙人です。だから死なないのですよ」
「クッ」
「明公の知っておられることだけが全てではありません。それをお知らせしたかったのですが」
「私の知らないこと?」
「はい」
 左慈はそう言って頷いた。
「明公は確かに優れた方であります」
「うむ」
 曹操は自負の強い男であった。自身の力には確固たる自信を持っていた。だからこそ今こうして頷いたのである。
「ですが仙人ではあられません」
「それもわかっておる」
 次第に曹操の怒りが収まってきた。彼は穏やかな顔でそれを聞くようになっていた。
「だからこそ問いたいのだ」
「何でしょうか」
「仙人とは人であるな。それには
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