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左慈
1部分:第一章
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やら唱えた。そして今度は鷲となった。
「鳥にも化けられるのか」
「はい。この通り飛ぶこともできます」
 彼はそう言うと飛びはじめた。そして部屋の中を飛び回った。バサバサと翼を動かす音までしていた。
「まだ何かありますか」
「そうだな」
 孫策は問われて考え込んだ。
「鳥や獣には化けられるのはわかった」
「はい」
「今度は別のものに化けてくれるか。そうだな」
 彼は考えながら言った。
「花に化けられるか。青い花にだ」
「青い花ですか」
「そうだ。できるか」
 孫策はニヤリと笑って彼に問うた。青い花は滅多にないものだ。見たこともない者も多い程であった。
「できなければ私としても考えがある」
 彼はここで案に左慈を脅迫にかかった。
「致し方ないことだがな」
「左様ですか」
「うむ。だができるのであれば問題はない」
 彼は鷲に化けたまま床に降りている左慈にそう言った。
「どうだ。できるか」
「容易いことでございます」
 彼はそう言うとまた何やら唱えて変身した。そして青い花になった。
「おお」
 それを見て孫策だけでなく家臣達も思わず声をあげた。彼等の中にも青い花を見たことのない者は多かったのである。そしてその花は一目見たら忘れられない程美しい青であった。空よりも鮮やかな青であった。
「これで宜しいでしょうか」
「うむ」
 孫策は自身の心を隠しながらそれに応えた。表面ではにこやかには笑っていた。
「御苦労、見事であった」
「有り難うございます」
 そして左慈は元の姿に戻った。そこにいるのは先程の足の悪い小柄な老人であった。孫策はその老人を見て内心危惧を覚えずにはいられなかった。
 彼は左慈に褒美を与え下がらせると家臣のうち最も信頼する張昭と張鉱、そして周瑜の三人を自分の部屋に呼んだ。彼等は孫策の家臣の中でもとりわけ知識、知恵に長けた者達であった。
「さて」
 孫策は三人を部屋に呼ぶと彼等に正対した。
「先程のあの左慈という男だが」
「はい」
 三人はそれを問われて応えた。
「率直に聞きたい。どう思うか」
「そうですな」
 まずは張昭がそれに答えた。
「あやしげな男だと思います」
「ふむ」
「ただ仙人であるのでここは何もなされぬのが宜しいかと」
「そなたはそう思うか」
「はい」
 彼は畏まってそう答えた。
「そうか。確かにそういう方法もあるが」
「私もそう考えますが」
 張鉱も張昭と同じ考えであった。
「そなたもか」
「はい。無闇に何かをしては後々祟り等がありましょう。それを考えますと」
「何もするべきではないというのだな」
「はい」
「ううむ」
 だが孫策はそれには賛成していないようであった。彼は元々仙人といった存在を好まなかったのだ。彼にとってそうした存在は
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