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皇帝の花
5部分:第五章
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つだけ確かなことがある。それは花についてであった。
「私のいる場所にまた薔薇を」
 この言葉はローマ市民や奴隷達、そして多数の貴族や議員達、彼に刃を向けなかった者達に伝わった。彼等はネロを愛している者達だったのだ。
「皇帝は死んだのか?」
「いや、それは嘘だ」
 彼等はこうも言い合うのだった。
「彼はきっと帰って来る」
「そうだ、このローマに」
 中にはネロが死んだことすら認めない者がいた。奇しくもこれはネロがそれだけ彼等に愛されていたということであった。
「帰って来るさ」
「そうしたら今も」
 ネロが死んだ後ローマは暫し皇帝の座を巡って混乱に陥った。それは一年続きローマの者達にとってはいい時代ではなかった。それによりネロの治世を懐かしんだのだ。

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