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皇帝の花
4部分:第四章
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ていた。
「ですがここは」
「お逃げ下さい」
「逃げるといっても何処に」
「私の別邸に」
 彼に解放された奴隷の一人が申し出てきた。彼の信頼する者の一人である。
「まずはそこで難を逃れましょう」
「だが私は」
 ネロはまだ冷静さを取り戻してはいなかった。議員や市民達に裏切られたのだという思いからまだ立ち直れていなかったのである。
「もう愛されてはいないのだ。だから」
「それは何かの間違いです」
「そうです、ですから」
 側近達はそう言って必死にネロを勇気付けようとする。
「ここは退きましょう」
「そうして再起を」
 そうしてネロを半ば強制的に別邸まで連れて行った。衛兵達が守りそうして慌しくローマを脱出した。その間ネロは茫然自失であり何も語ろうとはしなかった。ただその手にある様々な薔薇達を見ているだけであった。
 何とか別邸に着いた。一行はそれで一応は胸を撫で下ろしたのであった。
「これで大丈夫か」
「一先はな」
 一息ついたところで。主に対して述べるのであった。
「陛下、落ち着かれましたら」
「どうか賊を討つように御命令を」
「賊をだね」
「そうです」
 まだ虚ろな声のネロに対して申し上げた。
「そうすればまたローマに戻れます」
「御安心下さい」
 こうも述べるのであった。
「我々もいますので」
「そうか。そうだね」
 ネロはまだ虚ろな様子だが応えた。彼等はそれを見て何とか安心するのだった。だが。

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