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皇帝の花
3部分:第三章
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てくれることを望んでいる市民達の一部からもこう思われていたのである。
「それをよく思っていない風潮がまだローマにあると知っていても」
「問題ないと思っているのだな」
 この時代ローマはかなりギリシア文化の影響を受けていた。ネロはその最右翼であったのだ。しかしその一方でローマの伝統を守ろうという考えも根強かった。これは大カトーの頃から存在していたのだがその勢力がネロを快く思っていないのは当然のことであったのだ。
「そのようだ」
「ふむ。では彼等に働きかけよう」
「元老院にもな」8
 元老院は皇帝を掣肘出来る。この時代のローマは一応は共和制だったのだ。皇帝とはいってもその共和制を守っているというのが形式だったのだ。
「声をかけておくか」
「金もな」
 工作についても話された。
「見返りと共に」
「そしてやはり武力か」
「地方の総督達だ」
 地方を収め武力を持っている者達の力もまた目をつけられた。こうした行動において武力が決め手となるのは何時の時代でもそうである。だからこそ軍人が革命を起こせるのである。
「彼等にも見返りを」
「うむ。ではそちらもな」
 話が為される。
「決まりだな」
「ではこの方針で行くか」
「おおよそはな」
「皇帝に気付かれずにな」
 相手に気付かれては元も子もない。それも警戒された。
「そして彼の周りにいる市民達にも」
「彼等は相変わらずか」
 ネロは市民と奴隷達には愛されている。それを指摘するのであった。
「うむ。皇帝に薔薇を贈っている」
「相変わらずだな。皇帝の薔薇好きは」
「だが。それで面白いことができる」
 中の一人が楽しそうに笑った。
「面白いことがな」
「何をするつもりだ?」
「趣向がある」
 その者が囁くのだった。
「面白い趣向がな。任せてくれ」
「そうか。それは任せていいか」
「うむ」
「それでは諸君」
「新しいローマの為に」
 彼等はそう言い合って別れた。後には黒薔薇だけが残された。後日のこと。やはりこの日も薔薇に囲まれ市民達の愛を確認しているネロのところにまた薔薇が届けられた。しかしその薔薇を見てネロは顔を曇らせるのであった。

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