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藤崎京之介怪異譚
case.3 「歩道橋の女」
U 9.6 am8:33
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…。
 俺は顔をヒクつかせながら、何とも言い難い松山さんに向かって言った。
「連行されるのは、もう御免ですよ!」
「しないって!山桜の時とは違うし、君のことも分かってるから。ここへ来たのはな、亡くなったのが佐藤正史神父だからだ。面識はあるよな?」
 佐藤神父の名前が出て、俺は言葉を失った。松山さんが、何か悪い冗談でも言っているようにしか聞こえなかった。
 あの佐藤神父が亡くなった…?まさか…有り得ない。俺らが教会を出たのは、もう十一時近かったんだぞ…。
 警察がこうして動いているということは、少なからず死因に不審な点があるからだろうが、神父が昨夜の様子からして死ぬなんて、全く考えられない話だ。
「ショックなのは分かる。まぁ、君にだから話すが…」
 松山さんは言葉を失った俺にそう言うと、耳元で囁くように言った。
「実はな、佐藤神父はこの近くの歩道橋から飛び降りたんだ。死亡推定時間は、今朝五時前後だと分かってる…。」
「そ、そんな!神父が…有り得ない!」
「シーッ!シーッ!声がデカイって!」
 松山さんはそう言って、俺の口を押さえ付けた。ムッとした俺はその手をつねりあげ、直ぐ様顔の上から丁寧に退けてもらったのだった。
「いってぇなぁ…。」
「取り敢えず、ここで詳しい話は出来ないので、部屋の方へ来てください。」
 俺はそう言うと、松山さんを部屋へと案内したのだった。
 部屋に着くと、そこには未だ寝惚けている田邊が窓辺でボーッとしていたが、俺が頭にチョップを加えると、頭を擦りながら何とか目覚めてくれた。
「痛いじゃないですか…って先生、そこの方は?」
「ああ、警察の松山警部だ。俺が以前、大変お世話になった方だよ。そうですよね?」
 俺が嫌味を込めて言うと、松山さんはバツが悪そうに頭を掻きながら奥へと上がってきた。
「田邊、今朝なんだが…佐藤神父が亡くなられたそうだ。松山警部はその件で来られたんだよ。」
 俺から話を切り出すと、田邊は俺と同じ様に声を失ってしまっていた。
 当たり前だよな…。昨夜遅くまで一緒にいて、その上、手作りの夕食まで頂いたんだから…。
「どうして…お亡くなりに?」
 何とか自身を取り戻した田邊は、松山さんに問いかけた。
 俺も未だ詳細は聞いてなかったので、田邊と共に松山さんを見据えた。
「詳しく話すとこうだ。今朝5時半頃、近所に住んでいる学生がランニングをしていた途中で死亡していた佐藤氏を発見し、携帯から警察へ通報をしてきた。記録には5時27分と残されているので間違いは無い。その後、警察と救急が39分に到着したが、佐藤氏は既に…と言うよりは、ほぼ即死だったようだが、その場で死亡が確認されている。」
「ちょっと待って下さい。そうすると、死亡推定時刻は…?」
 死亡推定時刻に前後幅があるのは知ら
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