暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ四 海野六郎その十二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「己の鍛錬に励むべし」
「戦と政に備え」
「その通りじゃ、ではな」
「はい、決勝ですな」
「三好清海入道との」
「あの者確かに強い」
 三好清海、即ち清海についてだ。幸村は率直に述べた。
「それも相当にな」
「その清海にどう勝つのか」
「そのことですが」
「殿、勝たれて下さい」
「我等は殿こそがと思っています」
「無論拙者としても負けるつもりもない、いや」
 幸村は確かな声で二人に答えた。
「策がある、案ずるな」
「では」
「殿の戦、見せてもらいます」
「その様に」
 海野も含めて三人で言う、そのうえで幸村を見送った。土俵に向かう彼を。
 牛鬼は既に相撲の場を後にして服を着ていた、その彼のところに男が三人程来てそのうえで声をかけてきた。
「土蜘蛛殿、勝負を降りられましたが」
「どうかされましたか」
「何処か悪くなられましたか」
「いや、何ともない。ただあの海野という者と話してわかったのじゃ」
 そうだったとだ、牛鬼は自分よりも遥かに小さい男達に話した。
「あの者の主である真田幸村殿はまさに天下の傑物じゃ」
「確か真田家の次男殿ですな」
「まだ元服して間もないですが智勇兼備、文武両道の方ですな」
「相当な方と聞いていますが」
「あれだけの者が惚れて従っておる」
 海野の器も見抜いての言葉だ。
「そこまでの方ならじゃ」
「相当な方である」
「そのことがわかったからですか」
「勝負を降りられたのですか」
「幸村殿と勝負するのも面白いと思ったが」
 しかしというのだ。
「離れて観たいとも思ってな」
「だからですか」
「土俵から降りられ」
「観られることを選ばれましたか」
「そうじゃ、まあ餅と酒は残念じゃったがな」
 牛鬼はこの二つのことには少し苦笑いで応えた。
「しかしそれは何時でも手に入る」
「ですな、欲を張らずとも」
「手に入る時は手に入ります」
「そうしたものですから」
「だからよい」
 優勝の商品はというのだ。
「別にな」
「ではこれより真田殿の勝負を観ますか」
「そうされますか」
「そのつもりじゃ、相撲は多くのことを観せてくれる」
 牛鬼はこんなことも言った。
「ただの勝負ではない」
「その者の強さ、そして器もですな」
「見せるものですな」
「姑息な相撲をする者は姑息でじゃ」
 そしてというのだ。
「相撲で相手をいたぶる者はならず者じゃ」
「いますな、小さな力を全てと思う輩が」
「この天下には」
「匹夫の勇の者が」
「その様な者の相撲は小さいし下らぬ」
 まさにだ、語るまでもないものだというのだ。
「しかし器の大きな者の相撲は違う」
「大きくそして絵になる」
「そうしたものですな」
「そうじゃ、真田殿の相撲は見たところかな
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ