第5話 歌と信念と真名
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「バサラ殿」
「あん?なんだい。」
「夕方、村の入口で歌を歌うあなたを見た時、なぜ歌うのかと思いました。
今の時代、国が荒れていて、賊が増えています。
もしかしたら、賊と思い、殺されていたかもしれないのに、なぜ歌うのですか?」
「はあ?お前、そんなこと聞きに来たのか?」
「ええ、どうしても聞きたくて。」
そう告げる楽進の顔は真剣である。
バサラは頭を掻きながら
「おれは歌いたい時に歌う。歌を聴くやつがいなかろうが関係ねえ。そんで、おれの歌を聴きたいやつがいるなら、それが誰であろうとおれはおれの歌を聴かせるだけだ。」
「それが賊や異民族、自分に武器を向けるようなものでもですか?」
楽進がそう言うと、バサラは笑いながら
「へっ!感動するハートに賊かどうかは関係ねーぜ!おれの歌で殺し合いなんざする気を無くすくらいに感動させてやるだけだ!そうすりゃ、お互いに分かり合えるかもしれねーだろ!」
自信満々に告げる。
楽進と2人の会話を聞いていた李典と于禁は驚愕していた。
今の時代、国が荒れ、賊になる人間が増えている。
それに伴う食糧不足で餓死するものも多い。
その中で親を亡くす子どもも増えており、そんな子どもたちを何人も見てきた。
こんな時代に生まれ、生きていく人々の顔は絶望に溢れていた。
賊になる人間ももとをたどればそんな人間からなるものが多い。
治世がうまく行われていれば、賊になどならなくてもよかった多くの人々がいる。
もちろん、なるべくしてなる人間もいるだろう。
それら全ての人々をこの目の前の男は、歌で感動させ、分かり合おうというのか。
そんなこと不可能だ、不可能に決まっている。
理性ではそんな気持ちを言おうとする。
だが、心で、魂ではそんなことはない、この男なら出来る、出来るはずだ。
私たちもこの男の歌に感動させられたのだから。
その思いが理性の言葉を止めていた。
楽進はそんな内心を押し隠しながら、
「・・・あなたはどんな相手だろうと、歌で分かり合えると?」
「ああ!たとえ声が出せなくなろうが、歌い続けるぜ!」
そう宣言した後、ギターの弦を掻き鳴らし、笑顔を見せる。
その笑顔は、自分の歌はどんな人の心にも響かせ、感動させることが出来る、そう言うような自信満々の顔であった。
その顔を見た楽進は、あることを決心する。
「・・・あなたの考えは分かりました。夜分遅くに尋ね、歌を拝聴するだけでは飽き足らず、不躾な質問をしたことをお許しください。」
「別に気にしてねーぜ。おれの歌を聴きたいやつがいるなら、歌うだけだからな。」
「寛大なお心に感謝します。バサラ殿、あなたにお願いがあります。」
「お願い?なんだ?」
「あなたに真名を預けたいのです。」
楽進がそう告げる。
それを聞いた李典と于禁は
「
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