暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十八話 宣戦布告
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
明けて十五日に兵を発すると聞いた。一年か……」
「心配かな?」
「まさか、私は心配などしておらぬよ、シュタインホフ元帥。あれは勝つための準備を怠らぬ男だ。必ず勝つ」
私が断言するとシュタインホフ元帥が首を横に振った。

「いや、ヴァレンシュタインの事ではない、ユスティーナの事だ。一年も放って置かれるのだ、何かと心配であろう」
「それは、まあ……。しかしこればかりは耐えて貰わなければ……。ユスティーナの夫は宇宙艦隊司令長官なのだ」
私の言葉にエーレンベルク、シュタインホフ両元帥が頷いた。

「考えてみれば我らも随分と家族には寂しい想いをさせたな」
エーレンベルク元帥がしみじみとした口調で呟いた。我ら三人、何度も前線に出た。無事に帰って来たものの今思えば出征の度に残された家族は不安と焦燥に責められたであろう。十分にその不安を思い遣れていたかどうか……。

「だがそれも今回の出征で終わる。そうであろう? エーレンベルク元帥、ミュッケンベルガー元帥」
「そうだな」
「ああ」
ヴァレンシュタインを見た。私だけではない、エーレンベルク、シュタインホフ両元帥も見ている。

「妙な男だ。まさかあの男が反乱軍を下す事になるとは……」
「六年前には想像もしなかったな」
全くだ、六年前には想像もしなかった。第五次イゼルローン要塞攻防戦、あの時は面倒を引き起こす邪魔な小僧でしかなかった。だが今は私が果たせなかった夢をあの男が果たそうとしている。

「確かに妙な男だ」
私の言葉にエーレンベルク、シュタインホフ両元帥が頷いた。
「だが私の後継者であり娘婿でもある。不思議な事だ、どうしてこうなったのかな?」
二人が笑い出した。笑いごとではないのだが私も笑ってしまった。世の中には不思議な事が満ち溢れている。大神オーディンは悪戯好きの様だ。



帝国暦 490年 1月 14日   オーディン 帝都中央墓地  ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ



出立を明日に控え忙しい中、司令長官が突然外出すると言いだした。慌てて警護を整え同行したが司令長官が地上車を走らせたのは帝都中央墓地だった。墓地の傍に有った花屋で白い水仙の花束を二つ買い墓地の中に入る。事前に花屋に連絡してあったらしい、どうやら思い付きでここに来たわけでは無いようだ。もしかすると御両親の墓に行くのだろうか。

警護の兵士は司令長官と私の周囲を固めるように歩いている。皆厳しい表情をしている、出征前に何か有っては大変だと緊張しているのだろう。石畳の園路を司令長官と共に歩く。何度か園路を曲がり司令長官が足を止めたのは十分程歩いた頃だった。

「閣下、これは……」
驚いた、私だけじゃない、警護の兵士も驚いている。そして司令長官は少し寂しそうに笑みを浮かべた。
「ロ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ