暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十八話 宣戦布告
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
示で動くのは不愉快かと心配したようだ。何かと気を遣ってくれる。

グリーンヒル総参謀長が頷くと“では”と言って通信が切れた。二個艦隊で帝国軍の大軍を防ぐ、第十五艦隊はオスマン中将の第十四艦隊と共に新編成の艦隊だ。練度は必ずしも高くない、そういう意味では要塞防御戦のほうが安心して使えるところはある。しかし果たして防ぎきれるのか……。溜息が出そうだ。民間人の脱出計画が有った筈だ。念のためキャゼルヌ先輩に頼んで何時でも実行出来るようにしておいた方が良いかもしれない。溜息が出た……。



帝国暦 489年 12月 31日   オーディン 新無憂宮 黒真珠の間  グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー



黒真珠の間には大勢の人が集まっていた。政治家、軍人、高級官僚、貴族、そして貴婦人。宮中主催の新年のパーティがこれから行われる。以前、この種のパーティは門閥貴族とその取り巻きが勢威を振るっていたが今はもう無い。目立つのは政治家、軍人、高級官僚の姿だ。いずれも実力で今の地位を得た男達だ、門閥貴族達が纏っていた軽佻浮薄さでは無く落ち着いた力感の有る雰囲気を醸し出している。

パーティは華やかさだけでは無く昂揚感にも包まれていた。先日、帝国政府は反乱軍に宣戦を布告している。軍人だけではなく政治家、高級官僚にまで昂揚感が有るのはその所為だろう。今回の遠征が決戦だと皆が理解している。そして誰も遠征が失敗するとは考えていない、必ず成功する、反乱軍を下すと思っている。

エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、元帥、宇宙艦隊司令長官、そして私にとっては娘婿でもある。皆が遠征軍の勝利を信じるのは彼の存在が大きい。常勝、不敗を謳われ、大軍の指揮運用において周囲から絶大な信頼を得ている。もちろん、私も彼を信頼している。勝てる男だ。そして何と言っても運が良い、私には無かった運の良さを持っている。

当然だが彼もこのパーティに参加している。ユスティーナと和やかに会話をしている姿からは昂ぶりは見えない。彼を知らなければ遠征軍の総司令官と言われても到底信じられないだろう。軍の重鎮でありながら軍人らしさなど微塵も無い男だ。

「久しいな、ミュッケンベルガー元帥」
名を呼ばれて振り返るとエーレンベルク元帥とシュタインホフ元帥が立っていた。二人とも手にグラスを持っている。
「行かなくて良いのか、あちらに」
シュタインホフ元帥がニヤニヤ笑いながら顎でヴァレンシュタインとユスティーナを指し示した。

「保護者が必要な年でもあるまい、たまには年寄りの相手から解放してやらねば」
「なるほど。しかし保護者が必要なのは卿ではないのかな?」
「そうそう」
今度はエーレンベルク元帥もニヤニヤ笑っている。相変らず口が悪い。この中で一番若いのは私なのだが……。

「年が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ