暁 〜小説投稿サイト〜
魔道戦記リリカルなのはANSUR〜Last codE〜
Epico26次元世界を侵すモノ〜Antiquitas Phantasia〜
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正確にはベッドに横たわっている少年を眺めていた。女性の名前は八神シャマル。そして少年の名前はルシリオン・セインテスト。同じ家に住む家族である2人の今の関係は、医者と患者だ。

「・・・ルシル君・・・」

シャマルが大きな窓ガラスに手を添え、ルシリオンの愛称をポツリと漏らした。その表情は悲しみでいっぱいで、今にも泣き出しそうな・・・いや、「ルシル君・・・」涙がスッと流れ落ち、ズルズルと膝を折って跪いてしまった。

「どうすれば・・・よかったの・・・」

涙声でそう呻いた。シャマルも、医務局トップクラスの医療騎士ティファレトも、その他の医者らも懸命に治療に当たった。しかし、医者も魔導師も万能ではない。救える患者が居る。だが、救えない患者、も居るのだ。

「はやてちゃんに、はやてちゃん達にどう伝えればいいの・・・」

シャマルは両手で顔を覆い、とうとう声を出して泣き始めた。
懸命な治療の結果、ルシリオンは一命を取り留めた。これは確実だ。だが、問題はそれ以外にあった。“エグリゴリ”・シュヴァリエルとの戦闘で血を失い過ぎたこと、頭部への重度のダメージ、それによる脳内出血、シュヴァリエルに敗れ、手術を行うまでの数十分の間に失血による脳への酸素供給が滞った。その結果が・・・

「再起不能・・・、植物状態・・・、ルシル君・・・!」

ルシリオンは植物状態となり、再起不能の診断が下されてしまった。あまりにも最悪な結末。

「ルシル君は必ず助けます、絶対です、・・・そう言ったのに・・・、守れなかった・・・。ごめんなさい、はやてちゃん・・・、ごめんなさい、ルシル君・・・、ごめんなさい、オーディンさん・・・!」

シャマルの涙は止まることない。そんな彼女に近寄るのは1人の少女で、局の制服と白衣を身に纏っている。シャマルが足音に気付いて少女の方へと目をやった。

「ティファちゃん・・・」

「シャマルさん・・・、あの、ハンカチを・・・」

少女の名はティファレト・ヴァルトブルク。シャマルらと共にルシリオンの治療に当たっていた医務官の1人だ。ティファレトは制服のポケットからハンカチを取り出し、蹲るシャマルに手渡した。

「ありがとう・・・、ごめんなさい、ティファちゃん。見っともないところを見せちゃって・・・」

「いいえ。仕方ないですよ。ルシリオン君は、シャマルさんの家族なんですから」

ヨロヨロと立ち上ったシャマルはハンカチで涙を拭き、「洗って返すわね」と白衣のポケットにハンカチを仕舞い込んだ。そうして2人はルシリオンの病室前から去って行った。
それから1時間と少し。ルシリオンの病室前に誰かが近づいて来た。着ている服は局員の青制服。階級章は少将を表している。女性――というよりはまだ少女らしい外見だ。10代後半から20
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