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契約書
5部分:第五章
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第五章

 今度は脚に楔が打ち込まれた。人の脚にである。骨が折れるどころではなかった。肉が潰されその骨が中身まで砕かれ髄までが飛び散った。彼の脚は無惨なまでに打ち砕かれた。そのうえでまだ詰問するのであった。
「さあ言え!」
「悪魔だな!」
「悪魔と手を結んでいるな!」
 それでも彼は言わない。少なくともこのグランディエという男の精神力は尋常なものではなかった。何があろうとも耐え切ろうとしていた。
 しかしこれは魔女裁判である。判決なぞ最初から決まっている。そうしてそのうえで彼等は言うのであった。その捏造を堂々とだ。
「これだけのことをしても白状しない」
「まさしくそれこそはだ」
「悪魔に他ならない」
「そうだ、悪魔だ」
 こういうことにしたのである。どちらにしろ判決は決まっていたのだ。
「ならば悪魔を処刑する」
「そうだ、処刑だ」
「悪魔をだ」
 こうして彼は火刑に処されることになった。しかしここでグランディエに対してこう甘言を囁いたのである。
「今ここでそなたの罪を認めるのなら」
「少なくとも火刑の前にだ」
 火刑はわざと弱火にしてそのうえでゆっくりと焼くのである。これまた非常に惨い刑罰であった。欧州にはこうした刑罰が非常に多い。
「絞首刑にしてやろう」
「それでどうだ」
「楽に死ねる・・・・・・」
 最早息も絶え絶えの彼にとってこの言葉はこの上ない甘言であった。そうしてそのうえで今言うのであった。
「わかった」
 遂に頷いてしまった。そうしてであった。
 グランディエの処刑が行われることになった。脚を無惨に砕かれた彼はもう動くことができなくなってしまっていた。それで歩くこともできず木橇に括り付けられてそのうえで引き摺られていた。その彼を群衆達の罵声と投石が出迎えた。
「死ね!」
「地獄に落ちろ!」
「この悪魔がだ!」
 彼は何処までも無惨な扱いを受けていた。最早人としての尊厳は何処にもなかった。
 そしてである。彼は火刑台につなぎ止められた。そこにはもう薪や藁が堆く積まれていた。そして一人の僧侶がここで高らかに彼の罪を宣言した。
「さあ、今こそだ!」
「悪魔よ死ね!」
「どうあってもだ!」
「焼き尽くされろ!」
 グランディエはその宣言をただ聞いているだけだった。彼は絞首刑で死ねると信じていたのだ。
 だが彼を深く怨む者達はだ。そんなつもりは全くなかった。そうしてそのうえで彼のその火刑台の中にだ。火をくべてたのである。
「何っ・・・・・・!」
「悪魔はそのまま焼け死ぬのだ」
 その彼に冷酷に告げた者がいた。ラクタンスという。
「苦しみ抜いてな」
「騙したというのか・・・・・・」
「悪魔を騙しても罪にはならない」
 これがラクタンスの言い分だった。
「わかったら死ぬ
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