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契約書
3部分:第三章
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第三章

「そうした者達にも見せるのだ」
「末路はどうなるか」
「それを」
「そうだ。ではいいな」
「はい」
「それでは」
 宰相の方からもグランディエに対する方針が決まった。挑発に誘惑、風刺に人脈作りには長けていた彼だったが保身は知らなかった。その為に彼は最も恐ろしい死を迎えようとしていたのだ。
 リシュリューの側近も街に来た。そして地元の実力者の中を動き回りだした。そうしてである。ウルスラ会の贖罪司祭のミニョンという男が出て来た。彼は娘をグランディエに手篭めにされて孕まさせられた裁判所の検事トランカンの甥であった。彼自身も信者をグランディエに奪われ風刺の対象となっていた。彼にとってもグランディエは憎むべき相手であったのだ。
 彼は既に動いていた。密かに修道院に出入りしていたのだ。そして彼はここで最初から結託している地元の有力者や様々な司祭達、即ちグランディエの敵を一同に集めてシスター達の悪魔祓いをすると言い出したのである。
 これに反対する者はいなかった。当然である。何しろ全て芝居であるからだ。こうしてその芝居が実際に行われることになった。
 まずミニョンの部下の僧侶達が彼女達を連れて来た。ジャンヌがいきなり暴れだしたのだ。
「取り押さえるのです」
 ミニョンは極めて冷静に部下達に告げた。
「そしてその悪魔の名前を言わせるのです」
「はい、それでは」
「すぐに」
 白々しい芝居だった。だがそれでもそれは行われたのだ。 
 そうしてであった。悪魔の名前を言わせようとするとだ。シスター達は急に暴れだしたのである。
 そして僧侶達の手を振り解いて。何故か僧侶達の手は実に脆く外れてしまい後は追いはしなかった。そしてその間にシスター達は街の広場に出てしまった。
 そしてであった。異様な舞台がはじまった。
 シスター達は広場で乳房を出し腰を淫らに振って踊りはじめたのだ。誰もがこれには唖然となった。そう、何も知らない者達はだ。
 そして誰もが叫びだした。
「グランディエ様!」
「私と一緒に!」
「魔界に!」
「悪魔の快楽を!」
 地面を転がりまわり頭を前後に激しく動かし肩を妙な風に捻り曲げたり腹ばいになり手の平を足の裏につけて海老反りになり中には口から舌を悪魔の様に出すシスターもいた。
「あれは」
「悪魔だ!」
「悪魔つきだ!」
 ミニョンが目配せをすると街の人々の中から声がした。
「悪魔がついたんだ!」
「間違いない!」
「あれは悪魔だ!」
 そしてであった。その舌を出したシスターは身体をこれでもかと後ろにのけぞらせて恐ろしい速さで走り回った。そのうえで自分達とグランディエの関係を告白したのだ。
「これで間違いないな」
「そうだな」
「これで」
 地元の有力者達はまた芝居をはじめた。

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