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武后の罠
8部分:第八章
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とし己が政務にあたった。彼が崩御してからは息子を傀儡とし遂には中国の歴史上唯一の皇帝ともなった。周の則天武后である。
 武后は娘だけでなく息子も己の権勢に邪魔ならば容赦なく殺していった。唐皇室の者や彼等に忠誠を誓う者達も酷吏や密告を使うなりして惨たらしく消した。その酷吏ですら不要になれば切り捨て命を奪った。その残忍さは中国の歴史上でも特筆すべきものである。
 しかしその治世は平穏であり庶民に対しては寛容であった。文化的政策を好み文字を新たに作り多くの人材を抜擢し宗教を保護した。奇しくも同じ様に宮中では残忍極まりなかった漢の呂后の時代と同じく国は平和で庶民は泰平を謳歌していたという。政治家としてはバランスが取れ優秀だったのだろう。
 だが彼女が世を去った後その一族は唐王朝が復興しその権力争いの中で滅んでしまった。これが果たして彼女が殺した二人の后の呪いによるものなのかどうかはわからない。だが武后の一族が滅んでしまったことは確かだ。因果応報ということであろうか。悪事は必ず返って来るということか。


武后の罠   完


                 2008・8・12

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