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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
13.頼むだけなら誰でも出来る
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人の肩を掴む。ドワーフであるミアの掌は驚くほど力強く、そして暖かかった。

「いいかい、恰好つけるのはお止し。冒険者ってのは格好つけるだけ無駄に死に易くなる職業だ。英雄になれるだの何だの好き放題に言いふらす奴はいるが、それにしたって死んじまったら意味ないだろ?」

 元一級冒険者の語る言葉には、同じ心配でもエイナやヘスティアにはない厚みというか、重みがある。言霊というべきか、言葉に内包された彼女の過去が、伝わってくるようだった。

「惨めだろうが笑われようが、生きてりゃいいんだ。生き残った奴が勝ち組なのさ!」
「女将さん……」
「…………」
「ベル。お前、ミノタウロスに襲われて死にかけたらしいね?注意力が散漫な証だ。魔物の気配に臆病になりな。そうすりゃリングアベル坊やが無茶することにはならなかった」
「は、はい!!」
「リングアベル!お前は結果的にベル坊主を助けたけど、その分お前の大好きな女の子を随分泣かせたようじゃないか。人を助けるってのは、助けられるだけの力を持った奴だけがしていい事だ。はき違えるんじゃないよ」
「む、耳に痛い話だ……肝に銘じておきます、ミス・ミア」

 二人の顔を交互に見たミアは、大きく頷いて豪快な笑い声を上げた。

「分かればよろしい!!さあ、今夜はあたしの説教に付き合ってもらったお詫びにサービスするよ!好きなだけ食って英気を養いな!!」
「はぁい!!」
「では遠慮なく!」

 二人は大いに食べ、大いに笑い、言われるがままに存分に英気を養った。


 その日の帰りのこと。

「先輩……帰ったら一回、剣の練習に付き合ってもらえませんか?僕、さっきの話を聞いてったら余計に未熟な自分が許せなくなって……」

 今のままではいけない。リングアベルに守られ、ヘスティアに心配され続けたベルがずっと抱いていた想いだった。このままでは二人に認められるなど夢のまた夢、憧れの冒険者となったアイズの高みにもいつ辿りつけるか分かったものではない。

 だが、その焦りと慢心が招く悲惨な結果もベルは理解している。いや、リングアベルが身を持って教えてくれたのだ。
 ステータスは順調に上がっている。いや、順調すぎて不気味なくらいに思える。でも、それだけでもいけない。剣士として純粋に、獣を狩る強さ以外の経験が必要な気がしていた。今、ベルが頼れてなおかつそんな強さを持っていそうな相手………それは、リングアベルを置いて他にはいない。

「……おいおい、最初に頼れと言ったのは俺の方だぞ?今更変な遠慮をするなよ!」
「わわっ、髪の毛が!?ちょ、やめてくださいリングアベルさん!?」
「頼むと言ったり止めろと言ったり主張がはっきりしないな?優柔不断な男は女にもてないぞ!」
「それとこれとは話が別ですからっ!!」
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