暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第百十五幕 「ゲームセットは無常なるもの」
[5/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
断を突けるかどうか――それが問題だ。狙うのは完全な騙し討ち。圧倒的に強い相手にそれでも勝とうとするならば、これしかない。
噴射加速による急速接近に合わせ、「裏合気遠当て」のバリエーションを見せる。
今度は練習一つやっていないが、この程度の無茶はよくあることだ。
ぶっつけ本番、破れかぶれ、行き当たりばったり。
簪だって言っていたじゃないか。きっとこれが残間結章という男なのだ。
恐らく、チャンスは一瞬――
「………なーんか面白くないなぁユウちゃん。ひょっとして何か狙ってる?」
(――勘付かれた!?忌々しいほどに勘がいい)
動揺を鉄面皮の下に無理やり押し込んだ。
自分に道化の才能がない事は知っている。それでも、この一瞬だけ相手を騙す事が出来れば。
「……今更何が狙えるって言うんですか」
「その何が、って言葉の裏に隠してるんでしょ?本当にやりたいことを、その隠した右腕の裏にさ」
「――ッ!!」
ほら図星だ、と言わんばかりにくノ一はけらけらと笑った。
何とか顔には出さなかったが――訪れる筈の一瞬のチャンスは、潰えた。
この道化師と化かし合いをすること自体が間違いだったんだろう。右手に少しずつ、ほんの少しずつ、喋りながら収束していたエネルギーに勘付かれた。十束拳発射用の収束回路の中で可能な限り隠密にチャージしたこの拳も、出すことを見切られていては意味がなかった。
その瞬間、ユウは静かに――心のどこかで敗北を認めざるを得なかった。
「じゃ、私帰るから。あっちでへばってる簪ちゃんを連れておめおめ逃げ帰っちゃえばいいんじゃない?掛かってきてもいいけど――今のユウちゃんじゃ無理だね?顔が負け犬モードに戻ってるもん」
「………………言いたいことは、それだけですか」
「あ、こらこら!幾ら悔しいからって唇噛まないの!傷になったらどうするのよ!今の情けない自分が悔しいんなら、その想いはもっと別の所で爆発させなさい、ユウちゃん」
諭すようで、そしてどこか父親や兄を思い出すような暖かさの籠った言葉だった。
「貴方は――何なんだ」
「ん?何が?」
「貴方は、人のことをからかったり殴ったりする癖に、時々そうやって優しい言葉を吐いて人の心を弄ぶ。何がしたいんだよ……人の母親みたいに名乗ったり、人のパートナーを値踏みしたり!!貴方は何がしたいんだよッ!!」
その叫びに、くノ一は厳しく突き放すように、こう答えた。
「今の弱いユウちゃんには、それを知ることすら許されない。弱者とはそういうものよ」
静かに去っていくその背中を、ユウは目で追うことしかできなかった――
――かに思えた。
『ユウ、聞こえる?』
秘匿回線が入る。簪だ。
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ