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スケッチは二人で
第三章

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「そうしてもいい」
「あんたもそうしてるんだね」
「時々だがな」
「そうか、じゃあちょっとゴーガンみたいにしてみるか」
 潤子はこう言ってだ、実際にだった。
 そのスケッチの次はゴーガンの画風を真似てそれで描いてみた。写実ではなくその独特の原色を多く使った絵を描いてだ。
 そうしてだ、庄汰に見せて尋ねた。
「どうだい?」
「面白いな」
 庄汰はにこりともせずに答えた。
「それも」
「そうかい」
「いいと思う」
 庄汰はこうも言った。
「独特だ」
「ゴーガンかい?」
「いや、ゴーガンを真似てはいるが」
 このことは確かだ、しかしそれに加えてというのだ。
「君が出ている」
「あたしの画風が」
「そんな気がする」
「結構意識して真似たよ」
「それでもだ、僕にしてもだ」
 他ならぬ庄汰自身もというのだ、今もスケッチを続けていてそのうえでの言葉だ。
「こうしてだ」
「ああ、その画風は」 
 見れば幻想的な感じだ、その淡い色使いは。
「マネだね」
「あの画家を意識しているが」
「何かマネじゃないね」
「僕が出ているな」
「ああ、何かね」
 潤子は彼のその絵を実際に見つつ言った。
「あんたらしさっていうか」
「完全にマネじゃないな」
「何か違うね」
 こう言うのだった。
「独特のものがあるね」
「そうだな」
「具体的に言うと黒の使い方がね」
 この色のそれがというのだ。
「あんた黒多いね」
「マネよりもだな」
「そんな感じだね」
「そこに僕が出ているか」
「そう思うよ」
 その絵を見つつの言葉だ。
「そういうことなんだね、じゃああたしはまたね」
「描くな」
「やっぱり美術部にいるなら描かないと駄目だろ」
 それならというのだ。
「部活はその活動を楽しむものだろ」
「その通りだ」
「漫画が好きだから漫画描いてさ
「絵が好きだからだな」
「絵を描くものだろ」
 実に単純明快にだ、潤子は言った。それも明るい笑顔で。
「そうするよ、美術部にいるからさ」
「そうか」
「ああ、また描くよ」
「それで僕にまたその絵を見せるか」
「駄目かい?」
 にこりと笑ってだ、潤子は庄汰に尋ねた。
「それは」
「構わない」
 にこりとはしていないが拒む言葉ではなかった。
「君がそうしたいのならな」
「そうかい、じゃあまた見てくれよ」
「そうさせてもらう」
 庄汰はにこりとしないまま答えた、そしてだった。
 潤子はまた描いて庄汰に見せた、そして彼女もまた彼の絵を見た。そうした風に部活動をしていった。その中で。
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