第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「困ったことにな」
「ううん、子孫の人も来なくなって」
「それで墓も荒れるか」
「これは深刻な問題だね」
「厄介な、な」
「まことにじゃ」
苦い顔でだ、うわんは二人に話した。
「昔からある話じゃがな」
「昔からなんだ」
「こうした話があるんだ」
「閉店とか廃寺とか」
「そういう話が」
「わしの場合は廃寺じゃがな」
確かにだ、昔からあるというのだ。
「そして寺が廃れるとな」
「そこにあるお墓も荒れる」
「そうなるんだな」
「そういうことじゃ、墓が荒れるのは忍びない」
うわんは苦い顔のままだ、二人に言う。
「それでこうして人を連れ込んで掃除をさせておるのじゃ」
「そうか、成程ね」
「これで事情がわかったよ」
「そうじゃろ、では頼めるか」
「これも何かの縁だし」
「このお墓で眠っている人達のことを考えると」
喜椎人も庄汰もだ、うわんの話を聞いてだ。お互いに顔を見合わせてそのうえで二人で話して言うのだった。
「放ってはおけないね」
「僕だって死んでそのお墓が荒れるって嫌だし」
「それじゃあね」
「手入れをしようか」
「頼むぞ。出来れば寺に誰か戻って欲しい」
住職が、というのだ。
「そうすればこの寺も墓も元に戻るが」
「その辺りはね」
「どうにも難しい問題じゃね」
「それが根本的な解決じゃがな、しかしそれが出来ないと」
うわんは最善の解決が出来ないならというのだ。
「こうするしかない」
「そうなんだね、じゃあ」
「僕達でよかったら手入れするよ」
「頼むぞ」
「けれどね、こうした廃寺は」
「少しでも減らしていきたいものだよ」
二人は困った顔で、特にその口をへの字にさせて述べた、そのうえで荒れた墓をうわんと共に手入れした。
そして墓を何日もかけて奇麗に整えてからだ、喜椎人は言った。
「僕お坊さんになろうかな」
「僕もそう考えたよ」
庄汰も言うのだった、喜椎人と同じことを。
「将来はね」
「それでこうしたお寺をね」
「少しでも減らしたいね」
「そうしてくれると有り難い」
うわんも切実な顔で述べる。
「廃寺が少しでも減ってくれればな」
「こうしたことも起こらない」
「うわんさんも困らない」
「そうじゃ、寺も墓場も整うからな」
こう言うのだった、そのうえで。
奇麗になった墓場を見回してだ、今度はしみじみとした顔になって述べた。
「そうすればここにいる人達も喜ぶ」
「死んだ人達が眠っている場所もね」
「奇麗に保つ為にも」
「お寺にも跡を継いでくれる人が必要だね」
「お店でも」
「そうじゃ、跡継ぎが必要なのじゃよ」
うわんはこう言ってだ、二人におはぎが詰められた箱を差し出した、そして言うのだった。
「連れ込んだ謝罪と墓を奇
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ