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夢のような物語に全俺が泣いた
裏路地の一幕
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んでいくだろう。
さぁ、選べ」

俺は服の下に手を伸ばし、紅く煌めく炎の魔剣を取り出した。
魔剣フランヴェルジュ。
炎を司るその刀身は、暗闇を明るく照らし、一噌の存在感を出している。

「わ、わわわかった…もうアーデには近づかねぇ!
だから見逃してくれぇ!」

「……………去れ」

「ひぃぃぃ……!」

男は逃げ去っていった。
俺は再びリリルカに向き直り、目線を合わせるように屈んだ。

「取り合えず、話を聞かせて貰おうか?」

リリルカは渋々ながら言葉を紡ぐ。
まるでそれは、喧嘩をした原因を母親に話すような面持ちで。












さて、リリルカから聞いた話を纏めようと思う。
まずリリルカの両親は数年前にダンジョンで死亡。
理由はソーマファミリアの主神であるソーマが製造する神酒に魅了されてしまい、
その神酒を求める余り無謀な行動に出たらしい。
結果は死亡をもたらし、リリルカは一人ソーマファミリアに取り残され、当時冒険者だったリリルカは已む無くサポーターへと転身したようだ。

ソーマファミリアは一定期間内に決められた額を上納しなくてはいけない決まりが出来ており、行く宛のないリリルカはこれまでの生活過程で培ってしまった冒険者への恨みを蓄積し、終には窃盗を余儀なくしていたようだった。

「そして今回目をつけたのがベルだった、と」

「…はい。ベル様のもつナイフはヘファイストスのお手製だと聞きました。
そのナイフなら、高く売れるのではないか、と思って…」

「残念ながら、ベルのナイフは高額にはならないだろう。
刃は死んでるし、ベル以外が使えばそれこそガラクタに豹変する。
刀身に刻んである神聖文字も、解読出来るのは神だけだし、売却してもその意味は理解されない。
あれはベル専用のナイフなんだよ」

「……そんな…」

「ま、この際ベルの事は後回しにしろ。
今はお前さんの事についてだ」

今はベルのナイフは関係がない。
割りと簡単な話、もうベルから盗ろうとするな、と釘を指しておいたに過ぎないのだから。

「ソーマファミリアを、どう思っている?」

「……なんで……そんなこと聞くんですか…?」

「良いから答えろ。
その答えによって今後の対応は変わってくる」

まぁソーマファミリアに殴り込みに行くぐらいしか無いだろうけど。

「私は…辛いです。
リリはサポーターとしてやって来ましたが、冒険者から受ける屈辱は耐えがたいものですから。
リリは冒険者が嫌いです。
常に自分の事しか考えず、危なくなったらリリを囮にしようとします。
今までにも、何度かあったことです…。私は…リリはもう疲れました…」

思っていた異常に重かった。

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