第二章
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左千夫は東京の蕎麦屋、和風のその店の中に入って蕎麦を食べてからだ、道で真矢に苦い顔でこう言った。
「やっぱあかんわ」
「ざるそばもな」
「だしが違うわ」
こう言うのだった。
「全然口に合わん」
「あれやな、そばつゆの中にな」
「昆布がないやろ」
「鰹節はあるけれどな」
「その分深みがないわ」
こう真矢に言うのだった、スーツ姿で東京の浅草を歩いているが二人の雰囲気だけは大阪の住吉の感じだ。
「椎茸もな」
「何かちゃうな」
「蕎麦の味自体ちゃうわ」
「ほんま口に合わんかったな」
「この街並みも人もや」
左千夫は浅草のその街並みも見た。
「大阪と何もかもがちゃうさかいな」
「人情ないのう」
「そんな感じするやろ」
「ああ、するする」
その通りだとだ、真矢も左千夫の言葉に頷く。
「そんなん何もないわ」
「浅草とかは人情の町っていうけどな」
「葛飾とかな」
「寅さんにこち亀か?」
左千夫は映画や漫画のことも話に出した。
「どっちも葛飾やろ」
「そやな」
「はっきり言って全然面白いと思わん」
「どっちもかいな」
「葛飾の話はな」
「東京のことわし等何の興味もないからな」
「こうして出張で来るだけや」
そうした状況ならというのだ。
「何がええねん、テレビで東京のことやってもな」
「そやから何やねんって感じやしな」
「スポーツ新聞見たら巨人ばかりやしな」
「巨人なんか関西で一番人気ないわ」
そもそも巨人なぞという戦後日本のモラル、価値観の腐敗と崩壊の象徴の如きチームが持て囃されること自体がおかしい。それだけ戦後日本は繁栄はしているが倫理観が腐敗してしまっていることの明らかな証左である。
「あんなチーム何処がええねん」
「こっちのスポーツ新聞はほんま機関紙やな」
「巨人えこ贔屓のな」
「北朝鮮の機関紙や」
実際にそうだから笑えない。
「コンビニでも見たないわ」
「デイリーないんか、デイリー」
「巨人昨日負けたのに褒めるなや」
「ほんま東京は好きになれんわ」
野球においてもというのだ、そうした話をしつつ。
二人は浅草の町を歩いていた、その中で。
真矢は左千夫にだ、こう言った。
「そんでな」
「ああ、何や」
「ちょっと時間あるわ」
左手の腕時計で時間をチェックしてからの言葉だ。
「今日はな」
「そなんか」
「ちょっと雷門見てくか?」
こう左千夫に言うのだった。
「そうするか?」
「ああ、雷門かいな」
「確かにわし等東京嫌いやけどな」
「それでも来たからにはか」
「何か見に行った方がええやろ」
こう考えてのことだった。
「そやからな」
「行くんかいな」
「雷門見にな」
「近いんか?雷門」
左千夫は真矢の提案に
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