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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第四話 混沌の朝食場
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「あっちでの調査と矛盾はない。だから間違いではないと思うけど……はぁ、ほんと勘弁してよね」

 一吸いだけしたタバコを口から離し握り潰す。握り締めた拳の隙間からゆらりと白煙が一筋だけ上り、タバコは跡形もなく燃え尽きた。
 タバコを握りしめていた手を開き軽く払いながら凛は机の上に置かれた本へと背を向けると、肩越しにその本の表紙へと目を向けた。
  
「“魔法”が“魔術”へと変わり、“神話”や“伝説”が“中世”や“現代”に切り替わった空白の期間―――“ミッシングリンク”、か」

 一体どれだけの年月を超えてきたのか、下手に触れればそのまま崩れてしまいそうなレベルの状態の本である。百年や二百年じゃきかない、数千年の歴史を思わせる半ば化石化しかけている本。
 その表に刻まれた文字。
 それは、この世界―――ハルケギニアに住む者では読むことの出来ない文字で書かれていた。
 六割は解読が不可能な状態であったが、その“文字”が読める者であればこう読むことが出来るだろう。

「“いずれ来るだろう世界の終わりについての考察”……まったく嫌になるわね。そういうのは私の領分じゃないっていうのに」






 



「こら美味いこら美味いこら美味い―――」
「んっ、んっ、ん……っはぁっ! いや〜最初はどうかと思ったけど、慣れたら結構癖になる味だね」
「ミソシル。うん、気に入ったよっ! シロウさんお替わりはあるかな?」
「ちょっとあんた達食べ過ぎでしょ。こっちの分も少しは考えなさいよ」
「あ、そ、その……し、シロウさん。わたしにもお替わり……いえ、やっぱり……で、でも……」
「シロウッ! まだまだ足りません。このパンをもう一切れ、いえ二切れ……ええいっ一斤まるごと持ってきてくださいっ!!」
「ちょ、ちょっと何よっ! それわたしのよっ! あ〜もうっ! キュルケッ! あなた人の事言えないじゃないっ! なに人のもの取ってるのよっ!! って、あ〜っ?! アルトっそれわたしのっ! 勝手に食べないでよっ! こらっ返しなさい!」
「ルイズ。食事場は戦場と同じです。隙を見せれば(食事)が取られかねませんよ」
「…………もぐもぐ」
「あら、タバサ? あなた相変わらず良くそんな苦いもの食べられるわね。ほら、これ美味しいわよ」
「って、あ〜もうっ! キュ〜ル〜ケ〜ッ!! だからそれわたしのだって言ってるでしょっ!!」

 士郎たち水精霊騎士隊に貸し出された宿舎の一階には、小さな酒場があり。酒と軽食が出されていただろうその酒場は、今や小さな食堂と化していた。料理長は勿論衛宮士郎である。士郎一人が作ったとは思えない量の料理をずらりと並ぶ中、思い思いの席に座った飢えた少年少女たちが我先にと料理を口にしていた。若干一名見た目は兎も角
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