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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第四話 混沌の朝食場
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強い視線を向けるジュリオの様子を観察しながら、士郎は追い詰めるように少しずつ間合いを詰めていく。

「さっきも言っただろうが、俺は宗教関係者には縁があった、とな。文字通りの狂信者も、私欲に動く俗物も、誰よりも現実を見据えた現実主義者にも。そしてお前たちには現実主義者だ。エルフと戦争になる“聖戦”の危険性や不利益の事は十分に理解しているはず。なのに何故、それを押してまで“聖戦”に拘わる。何故だ? “聖地”に一体何がある?」
「……今、それをあなたに言ったとしても無駄でしょう」

 苦しげに息を吸いながら僅かに視線を下げるジュリオに対し、士郎は大きく一歩前へ出る。ジュリオとの距離は手を伸ばせば届く距離であった。士郎がその気になれば、容易にジュリオを組み伏せる事が出来る距離である。

「何故、そう言い切れる」
「無駄ですから。この場であなたに伝えたとしても、どうにもならない(・・・・・・・・)どうしようもない(・・・・・・・・)。それに、信じてくれる可能性もない。何せ目に見える証拠がまだ(・・)ありませんので」
まだ(・・)、だと」
「ええ。今はまだ(・・)その時ではありません」

 強く断定する口調のジュリオの言葉。顔を上げたジュリオは手を伸ばせば触れる程の距離に立つ士郎に驚くことなく毅然とした態度で向き合う。

「これ以上は無駄なようなだな」
「そのようですね」

 くるりと未練など全くない様子で士郎に背中を向けるジュリオ。そして一歩歩きだそうとするジュリオの背中に、士郎の鋭い声が掛かった

「なら、さっさと帰る事だな。隠れてタイミングを図っているそこの鳥も一緒に」
「―――」

 前へと向かう足が宙でピタリと止まる。

「何を企んでいるかは知らんが、厨房は動物厳禁だ。朝食の一品にされたくなければ、連れて帰ることだな」
「―――ええ、わかりました。やはり、あなたは一筋縄ではいかないようだ」

 前へと出すことなくその場に足を下ろしたジュリオは、何の表情も浮かんでいな顔で肩ごしで士郎をチラリと見た。

「はっ……俺なんてまだまださ。まあ、一応忠告しておくが、もう俺たちにちょっかいはかけない方がいいぞ」
「それは警告ですか」

 若干警戒を含めながらジュリオが問いただすと、士郎は頭痛を堪えるように額に手を当てながら空を仰いでいた。

「いいや。親切だ。下手にちょっかいをかけてあいつの逆鱗に触れたら互いに嫌な目に合いそうだからな」
「あいつ、ですか? それは一体誰の事を?」

 士郎でも恐る相手。想像も出来ない難敵を思い、ジュリオが大きく喉を鳴らし士郎の返答を待つ。
 ゴクリと蠕動した喉が音を立てると、士郎は神妙な顔を頷かせながらある人物の二つ名を告げた。

「―――“あか
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