第十五章 忘却の夢迷宮
第四話 混沌の朝食場
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…ま、それも本当に本人が言ったかはわからないけどね。それに往々にしてこういった“聖戦”ってやつの理由は後からのこじつけだし」
眉をひそめながら自分でも信じていない答えを口にしている士郎を見つめながら、凛は新たな紅茶が注がれたカップを持ち上げる。鼻腔をくすぐる紅茶の香気を感じながら、凛は考えをぶつぶつと呟いていた。返事を期待してのものではなく、自身の考えを纏めるためのものであった。
「それは言い過ぎ……じゃ、ないか」
「ま、その謎が解明されたらエルフとの問題も解決するかもね」
とは言え口を出された事に不快を得るようなものではなし。士郎からのツッコミに、思考の渦から抜け出した凛が肩を竦めた。肩を竦めながら笑みを向けてくる凛に、士郎も笑って頷いた。
「だと、いいんだがな」
「上手くすればこの“聖戦”とやらもひっくり返せるんじゃない?」
「そうなればいいが」
凛の言葉に小さく頷く士郎。
「“聖戦”が終われば、トリステインの女王様も喜ぶんじゃないの?」
「ああ。きっと喜ぶな」
凛の言葉に大きく頷く士郎。
「……随分と実感がこもっているわね」
「―――」
急激に冷えきった凛の声に、瞬間冷凍されたように士郎の動きが停止する。
数秒の後、僅かに解凍したのか、ゆるゆると視線だけが隣の凛へと向けられる。
視線の先の凛は、顔を俯かせてどんな表情を浮かべているのか判然としない。
「士郎」
「……は、い」
ガクガクと震える身体を必死に押さえつけながら士郎は頷く。
「色々とあんたの噂は聞いてたけど、まさか一国の女王にも手ぇ出してたとはね」
「い、いやいや。そんな、出して―――」
ガタンッ! と大きな音を立て凛に体ごと向き直り、ブンブンと手と顔を横に振るが、俯いた姿のまま、垂れた髪の隙間から覗く視線の圧力に声が止まる。
「本当に?」
「…………」
「なんでいま目を逸した?」
す〜と横に移動する視線を移動させた士郎に、凛はゆっくりと顔を上げなら問い掛ける。
顔にはステキな笑みが浮かんでいる。
「ま、まて、ほ、本当に誤解だっ! 俺とアンはそんな関係じゃ―――」
「『アン』ねぇ……」
士郎の思わず出てしまったと言う感じの言葉に、浮かべていた笑みがビシリと音を立てて崩れた。
「と、遠坂、さん?」
「なぁ〜に? エ・ミ・ヤ・ク・ン」
ガクガクと身体がブレて見える程に大きく激しく震わせる士郎に、不自然なほど陰影が濃い笑みを浮かべる凛。
「ぼ、暴力反対」
両手を上げ、完全降伏を示す士郎に、
「大丈夫よ」
凛はほわっとした慈愛の笑みを見せた。
「り、凛―――」
微かな生存の可能性を感じ、士郎
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