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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第四話 混沌の朝食場
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ばあの時のブリミルはニダベリールと名乗っていたが」
「ああ、その頃の話かい。なら尚更わからないだろうね。その頃はまだ、おりゃあまだ生まれてなかったからな。ああ、懐かしいねぇ。ブリミルと……そう、サーシャだ。長い耳の高貴な砂漠の娘……サーシャとおりゃあ良いコンビでな。おいらとサーシャ達三人で散々と暴れたものよ。で、良く後ろから撃ってくるブリミルの魔法に巻き込まれたんで説教も皆でしていたなぁ……。サーシャはちょっと気が強くてプライドも高いんだが泣き虫でなぁ……それ以上に優しい子だったよ」
「そう……随分と楽しい思い出のようね」
「ああ、最高だった」

 懐かしさと愛おしさを含んだ声で誰に言うでもない呟きに、凛が自然と浮かんできた笑みを頬に湛えながら頷くと、デルフリンガーは自信を持った声で応えた。

「どんな事があったんだ?」
「だから詳しい事は覚えてねえって言ってるだろ」

 士郎の問いに、デルフリンガーはもどかしさや寂しさが入り混じる声で答えた。

「ただ、そうだな。最後に何かとても悲しい……本当に悲しい事があったってことだけは覚えてる」
「それは?」
「……残念ながら覚えてねぇ。いや、幸いなことに、だな。ただ、そういう感情だけを覚えているだけで、後は、そうだな……喪失感がある」

 士郎に、ではなく自身に言い聞かせるような呟くデルフリンガー。

「喪失感?」
「ああ……身体の一部が欠けたような、いや、心の一部がってのが近いかな」
「そう……ま、その様子じゃ無理矢理聞き出せそうにないわね」
「恐ろしいこと言う姉さんだね」

 危険笑みを浮かべる凛に、デルフリンガーはカチャカチャと剣帯を震わせながら笑った。

「必要ならそうするわよ。ま、それなりに有益な話だったわ」
「おお、恐ろしい。安全のためにおいらも何か思い出したら教えるよ」
「そうしてくれると助かるわ」

 互いに笑みを含んだ言葉を交わし合う凛とデルフリンガー。話が一段落し、凛は冷え切った紅茶で喉を潤していると、ふと頭に浮かんだ言葉がそのままポツリと口から溢れた。

「それにしてもわからないわね」
「何がだ?」
「何がって? ブリミルってのはエルフを使い魔にしてたんでしょ。で、あんたの話を聞く限りじゃそんなに仲は悪くなかった」

 飲み干したカップをテーブルに置きながら、凛は新しい紅茶を注ごうとする士郎に目で礼を伝えながら小首を傾げた。
 
「そうだな」
「なら、どうして今ブリミル教徒とエルフは敵対するようになったのかしら?」
「それは……“聖地”とやらを奪われたからじゃないのか?」
「……本当にそれだけなのかしら。他にも理由があるんじゃないの? 何故ブリミルはエルフと敵対するようになったのか、聖地を取り返すように訴えたのか…
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