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すれ違い
4部分:第四章
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ったが達哉はそれでも顔を赤らめさせていた。
 その日だけに終わらず次の日もまた次の日も。幸次郎は決まった時間にこの道を通り彼女とすれ違った。ただそれだけだったがそれでも彼は変わった。塞ぎ込むようになり学校でも外でも下宿先でも。ぼんやりとしていてそれでいて思い詰めた顔で空を見上げて物思いに耽るのであった。
「しかしだ」
 今日も幸次郎の部屋に学友達が集まっていた。昼なので酒はなくただ集まっているだけである。幸次郎は部屋の中央で車座になっている仲間達から離れ窓のところに座って右手で頬杖をついている。そのうえでぼんやりと青い空を見上げている。その彼を見て明人が言うのだった。
「林君も変わったな」
「僕が変わったか」
 虚ろな声で明人に返す。しかし顔は空を見上げたままだ。
「そんなに」
「うむ、変わった」
「変わったというものではない」
 昭光と友喜も彼に言ってきた。
「まるで別人ではないか」
「何かあったのか?」
「ないと言えば嘘になる」
 幸次郎は空を見上げたままだったがこう言ってきた。
「それはな」
「ふむ、やはりな」
「それでは一体」
 三人はここで彼に対して問うた。当然この場には達哉もいる。しかし三人は幸次郎を見ているのであって達哉を見てはいなかった。
「林君」
 その達哉が幸次郎に言ってきた。
「君が話すのか?」
「そうする」
 やはり空を見上げたままだった。
「黙っていても何にもならないからな」
「そうか。それなら僕は黙っている」
「そうしてくれるか」
「うむ。それではな」
 ここまで話をして一旦口を閉ざす達哉だった。幸次郎は静かに口を開きだした。

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