1部分:第一章
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い。そこを足掛かりにして」
「亜細亜を狙うな」
「間違いない。亜米利加が狙うのは支那、そして」
達哉の言葉がまた鋭く、かつ強いものになる。
「我が国だ。だからこそ海軍は必要だ」
「一理ある」
幸次郎はまた達哉の言葉を認めた。しかしであった。
「だが」
「だが。何だ?」
「やはり海軍は金がかかり過ぎる」
「また金か」
「何度も言うが国庫に負担をかけては何にもならない」
あくまでここを指摘するのだった。
「それでは本末転倒だ。しかもあの戦争以後軍はかなり変わっていっているそうだな」
「そうなのか?」
「ローズ君から聞いた」
不意に横文字の名前が話に出てきた。
「彼からな」
「ローズ君というと彼か」
「そうだ。あの英吉利から来ている留学生だ」
その留学生の言葉を話に出すのだった。
「彼が言っていた。あの戦争では塹壕があり」
「うむ」
「そして飛行機があり戦車があった」
「それは僕も知っているが」
「それだけではない。戦い方も随分変わったという」
彼が言うのはこのことだった。
「それを学び軍を然るべき形にしていかなければならない。陸軍をな」
「だから君は今は海軍に予算を回すべきではないというのか」
「今は只でさえ陸軍が重要になっている」
幸次郎はまた一つ話を出して来た。
「半島も台湾も護らねばならないしな」
「半島か」
「既に二個師団を新設している」
日韓併合後に新設されたその二個師団である。これは朝鮮半島防衛の為だ。なおこれを新設するにあたって陸軍はよく言えば必死に、悪く言えばかなり強引に主張した。その存亡をかけて主張したと言ってもいい。この結果当時の内閣である西園寺公望内閣は総辞職しかわって政権に就いたのは長州藩出身で陸軍の領袖の一人でもあった桂太郎だ。しかし彼は元々既に二度宰相を経験しており色々な政治的取引もあり政権を担当しない約束があり彼もその気はなかった。しかし陸軍のこの問題を抑えられる人物として元老の中でも指導者であり尚且つ陸軍の最高権力者でもあった山縣有朋に指名され首相となった。なお桂はこれにより激しく批判を浴び二個師団増設問題を処理した後総辞職している。そのすぐ後に死去していることからこれが彼の命を奪ったのは明らかである。
「しかしそれだけでは駄目だ」
「数の次は質か」
「その通りだ」
彼は言った。
「質だ。兵器とその運用のな」
「そこまで見ているのか、君は」
「これもローズ君から聞いたことだ」
またその英吉利からの留学生の名前を出したのだった。
「やはりこれからは大いに変えなければならないらしい。陸軍を」
「そうか。しかし陸軍はな」
「僕達は外から言うことしかできないな」
「そうだ。やはり陸軍は軍人の世界だ」
当時はその区分は完全にさ
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