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牡丹
7部分:第七章
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血の中に倒れ込んだ。
「これで貂蝉はわしのものだ」
 呂布は倒れ伏した董卓を見下ろして言った。
「それで宜しいですな」
「御前は勝った」
 董卓も言う。敗れたとはいってもまだ覇気をその身にまとわせていた。
「それだけだ」
「はい。ですから貂蝉を」
「うむ」
 董卓は頷く。
「それでは」
「しかし不思議なものだ」
 董卓はあらためて述べた。
「天下よりもな。欲しいものがあるとは」
「それが貂蝉だと」
「同じじゃ」
 彼は言う。
「御前とわしはな。同じだったのじゃ」
「ええ、確かに」
 それは呂布もわかる。だからこそ二人は争ったのだ。
「だから。覚えておけ」
 そう呂布に述べてきた。死期が今そこに迫ってきているというのにその顔は赤くまるで鬼のようである。とても今死ぬとは思えない。
「わしと同じ破滅にならぬようにな」
「それでも構いません」
 呂布はそれに応えて述べた。
「私は貂蝉さえいればいい。だから」
「そうか。そうじゃな」
 その言葉に微笑んでみせた。
「では己の道を突き進むがいい。よいな」
 最後にそう述べて言葉を止めた。董卓はそうして最後まで董卓として死んだのであった。
 呂布はそんな彼に対して一礼する。まだ礼は失ってはいなかった。
「後は・・・・・・貂蝉」
 彼女のことを思い出した。周りを見回したがそこに彼女はいなかった。
「何処だ、何処にいる」
 咄嗟に辺りを見回す。しかし見当たらない。
 辺りを歩いて回ることにした。すると庭の外れ、牡丹の花の側に彼女はいた。その手に短刀を持って倒れ込んでいた。
「馬鹿な、何故だ」
 呂布は彼女の姿を見て叫んだ。喉から血を流して死んでいたのだ。
「これからわしは御前と」
 貂蝉に駆け寄る。そして抱き寄せる。
「何故だ、それなのに何故」
 返事はない。何も語りはしない。
「どうしてなのじゃ、それなのに御前は」
 だが貂蝉は一言も語りはしない。しかしその口元は微かに笑っていた。
 その微笑みが何故であるのか呂布は見てもわからなかっただろう。その前に彼はその微笑みに気付いていなかった。彼は貂蝉を抱いて涙を流していた。そのまま何時までも彼女を抱いていたのであった。

 董卓を倒した呂布はその後流転の人生を送った。戦乱と裏切りを繰り返し最後は徐州での戦いで曹操猛徳に捕まった。その時は冬だった。雪が世界を覆っていた。
「ふん」
 彼は縛り首になることになった。後ろ手で縛られ今城内の刑場へ引き立てられていた。彼は鎧のまま連れられ憮然とした顔で歩いていた。刑場も雪で白く染められている。既に何人かの処刑が終わっている。彼等は皆城門に吊るされている。呂布の番というわけだった。
「呂布よ」
 絞首台の前には曹操が配下の武将達と共にいる。鋭利
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