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牡丹
4部分:第四章
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ある。宮殿の中への立ち入りも許されているし帯剣も認められている。彼は今は剣こそ抜いてはいないがその腰には剣があった。
 いざという時はそれを抜くつもりであった。しかし今は貂蝉を抱いて董卓を睨み据えるだけであった。銀の火花が二人の間に散る。
 しかしそこで李儒がやって来た。彼は慌てて二人の間に入ってきた。
「待たれよ、待たれよ!」
 そう叫んで間に入る。彼も娘婿であり董卓の腹心であったのでそれが幸いしたのだ。慌てて両者の中に入って互いを制止する。
「太師も将軍も落ち着かれよ」
「李儒か」
「はい。将軍」
 董卓に応えた後で呂布に慌てて顔を向ける。
「今は下がられよ」
「しかし李儒殿」
「話は後で聞き申す。だから」
「わかった」
 李儒の言葉を聞き入れた。貂蝉から離れ大人しく引き下がるのであった。
「待てっ」
「お待ち下さい」
 董卓はまだ呂布を追おうとする。しかし李儒は彼の前に立ちはだかり通そうとはしない。小さな身体を必死に伸ばして董卓の巨体を遮る。
「太師、ここは御自重を」
「何故わしがそのようなことをせねばならぬかっ」
「まずは落ち着いて下さい」
 彼はそれでも言う。
「宜しいですね」
「・・・・・・あくまでどかぬのだな」
「はい」
 毅然として返す。その強い決意の目を見て董卓も立ち止まることにした。そのうえで大きく息を吐き出してから彼に声をかけた。
「済まぬな。鎮まった」
「ええ。それではですね」
 申し訳なさそうに微笑む彼に対してさらに言う。
「お話を御聞きしましょう。どうされたのですか?」
「うむ。それじゃがな」
 ここでちらりと貂蝉を見る。それから彼女に述べる。
「そなたは下がっておれ。よいな」
「畏まりました」
 貂蝉はその言葉を受けて引き下がる。董卓はそれを見届けてから李儒に顔を戻して言うのであった。
「場所を変えるぞ。ここでは何じゃ」
「ええ。それでしたら」
 李儒はそれに応える。彼等は場所を替え宮殿の隅に二人座って話をするのであった。
 そこは董卓の部屋の一つであった。他のゴテゴテとした目立つ部屋に比べてこの部屋は質素で何もない。まるで彼が生まれ育った北の大地のようである。そこで席につき李儒と向かい合って話をしたのであった。
 董卓は不機嫌な様子で呂布が貂蝉に抱きついていたことを語る。あげくには処刑さえ言い出していた。
 しかし李儒はそれを黙って聞いている。一通り聞いた後で口を開くのであった。
「よいではありませんか」
 李儒は董卓にそう述べてきた。
「よいと申すか」
「太師」
 彼は言う。
「確かに美女はいいものです。しかし私はより素晴らしい美女を一人知っております」
「それは誰じゃ?」
「天下です」
 李儒は静かにこう述べてきた。
「天下か
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