三十二話 揚羽蝶と真っ白な夜
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「ねぇ」
…
「ちょっと!」
…
「聞いてよ!」
…
「ねぇ!」
…
「白髪の人!」
…?
私はそこで声のする方向を見た。
いつの間にか少女が私の目の前に立っていた。
「やっと気づいた。」
私のこの少女に対しての最初の印象は「なんだこいつ」だった。
青というより…水色?の髪の毛でポニーテールを作っている。
小柄(私が言えないが)な少女だった。
「…ねぇ!ちょっと聞いていい?」
「…どうぞ」
この子は明るいイメージがある。
暗い性格の私とは絶対に合いそうにないタイプだ。
「あなたが、女の子を守って不良をボコボコにした子?」
「…え?」
私は驚いた。
不良を再起不能にしたことはともかく、なぜ私が女の子の事を守ったことを知っているのだろう。
私の動揺を少女は見逃さなかった。
「やっぱりあなたなのね!」
「…」
私は俯きもしないものの相変わらず顔も上げない
「ねぇ!私と友達にならない?」
そう言ってその少女は私に手を差し延べた。
ー思えばこの頃私は初めて救われた。
私は躊躇いがちに手を重ねた。
そして初めて人の温もりに触れた…
あまりの温かさに、
火傷してしまいそうな温かさに。
私は俯いて、涙を流した。
「…ねぇ…これ…使ってよ。」
少女は私にハンカチを渡した。
私はそれを受け取って涙を拭う。
ハンカチには、あげは、とあどけない平仮名で書いてあった。
私はハンカチを少女に渡して言った。
「…ありがとう、アゲハ。」
アゲハは私に微笑んで返してくれた。
そうか、この子も足りないのか。
足りない子…
私と同じ子…
足りないのに、偽って。
辛いのに、明るく振る舞って
悲しいのに、誰もいない
欲しくて欲しくてたまらないのに我慢をして強がって、偽って、感情を閉ざす。
そんな社会不適合者。
私は気がついたら笑みを浮かんでいた。
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