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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
第一章 Your Hope
9.燻る者たち
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らいドンと来い!」

 彼女の面倒を見るのは、借りのある友人が珍しく頼んできたからだ。肝心の本人はまだ依頼を完遂していないにも拘らず用事があるとどこかへ行ってしまった。彼の事だから依頼料を受け取るまでは必ず仕事をやる遂げるだろうが、彼らしくない、とロキは感じた。
 傷心の女の子をほっぽり出した彼に呆れはしたが、それだけ自分に信用があると考えておくことにした。彼のも彼の事情がある。それをくみ取れないロキではない。彼が何をしに行ったのかは予測がついていた。

 それより、今は目の前の女の子の事が気にかかる。
 落ち着いた白と黒のワンピースに、茶色がかったつややかな髪。抱けば折れてしまいそうな細い体と憂いを帯びた表情が、彼女の抱える感情の重さを物語っている。

「ナジットの頼みならウチも断れんしな。()りたいならいつまでも()ってええんやで?」
「いえ……神殿から離れても、私はオブリージュの名を持つ者。巫女としての使命は果たさなければなりませんから」

 これは、危ういな――ロキは心の隅でそう思った。
 気丈に振る舞ってはいるが、その巫女の使命という思い鎖に彼女は悲鳴も上げずに引き摺られている。人の子が背負うには重すぎる荷……しかし、それを肩代わりすることは、ロキには出来ない。
 せめて彼女がたまの時間に荷の重さを忘れられるような存在になりたいものだが、苦戦は必至だろう。何故なら、彼女はまだロキ達の事を信用してはいないのだから。

「使命か………態々ついてきたっちゅうことは、その使命がノルエンデにあるんか?」
「……神殿の襲撃の後、思い出したことがあるんです。クリスタル正教に伝わる予言を。『クリスタルに禍い訪れし時、世界の終わりを告げる瘴気が光と共に訪れん』……あの光が立ち上ったのと、神殿襲撃はとても時期が近かった。………嫌な、予感がするのです」

 そう言ったっきり、少女――アニエス・オブリージュは俯いた。
 まるで、世界の行く末を憂う聖女のように。
 
 
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