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赤兎馬
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第一章

                          赤兎馬
 一日で千里を走る。その噂は嘘ではなかった。
 赤い毛をして鬣は漆黒だ。そして見事な身体をしている。
 それが赤兎馬だ。関羽の馬だった。
「見事な馬だな」
「ああ、何時見てもな」
 誰もがその姿を見て唸る。関羽の巨大な身体を乗せても全く遜色がない。彼の大柄な身体と合ってさえいる。そこまで見事な馬であった。
「思えばあの董卓の馬だったしな」
「それに呂布のな」
 いずれもその素行はともかく武勇では比類なき者達であった。
「あの呂布の大柄な身体も乗せていたしな」
「それだけの馬ってことだな」
「そしてな」
 誰もがさらに言うのだった。
「赤兎馬も主を選ぶからな」
「馬がか」
「主を選ぶのか」
「ああ、そうだと思うぜ」
 そしてだ。こう言われた。
「董卓は確かに悪い奴だったさ」
「それでもか」
「そうだっていうのか」
「ああ、英傑だった」
 これは事実だった。確かに彼は暴虐を極めた。帝都洛陽を地獄に変えた。しかしそれでも彼の軍略と武勇は確かなものであったのだ。
 北の異民族達と長年戦ってきた。両利きであり左右に弓を置き両方向に弓を次々に放つことができた。軍功を重ねてきた男なのだ。
 それはよく知られていた。まずは彼のことが話された。
「確かに凄い奴だったからな」
「赤兎馬が背中に乗せるだけの奴だったってことか」
「ああ、それは間違いない」
 こう話されるのだった。
「あの男もな。それだけの男だったんだ」
「そして呂布か」
「あの男もか」
 次は呂布の話だった。
「あの男は強かったな」
「ああ、あんな強い奴はいなかった」
「項羽に匹敵するんじゃないのか?」
 覇王と言われた男だ。力は山を抜き気は世を覆うと最期に詠っている。その武勇も軍略も伝説とまでなっている。中国の歴史でも最強とまで言われている。
 その項羽にだ。呂布は匹敵するとまで言われているのである。
「一人で一軍を相手にしたしな」
「ああ、虎牢関でもな」
「それからもな」
 戦場で荒れ狂う、まさに獣であったのだ。彼には誰も勝てなかった。
「方天画戟だけじゃなくて弓も使えたしな」
「とにかく化け物みたいな奴だった」
「鬼神だった」
 呂布についてもであった。
「あれだけ強ければな」
「赤兎馬も背に乗せる」
「あの男もか」
「そうだろうな、それだけの男だったんだよ」
 呂布もそうであったと言われるのだった。そして彼は曹操との戦いに敗れ捕虜となり縊り殺された。赤兎馬はそれからその時曹操のところにいた関羽に渡ったのだ。
「そして関羽だ」
「それだけの男だな」
「ああ、間違いない」
「あの人はな」
 関羽については誰もが知っていた。蜀
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