第十二幕その九
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「タクシーでお帰り下さい」
「そう、ですか」
「では」
「はい、それでは」
日笠さんは残念そうに笑うだけでした、そして。
タクシーが来てです、先生がタクシー代を出そうとするのを止めてからです。先生に頭を下げてそうしてお家に帰りました。
先生は歩いて帰りました、そしてその一部始終をトミーと動物の皆にお話しますと皆はやれやれとなりました。
サラが来た時にもこのことをお話しました、するとサラはです。
皆よりもずっと強く呆れたお顔になってです、こう先生に言いました。
「兄さん駄目過ぎるわよ」
「駄目過ぎるって?」
「何やってるのよ」
目を顰めさせてです、ちゃぶ台で日本のお茶を飲みつつ言うのでした。
「本当に」
「何か駄目なところがあったかな」
「何もかもがよ」
駄目だというのです。
「それ何よ」
「何って」
「何でそこでお誘い断ったの?」
「いや、飲み過ぎたからね」
先生はかえってです、サラの呆れた調子に戸惑っています。それできょとんとしながらサラにこう答えたのです。
「もうそれ以上はね」
「飲むと、っていうのね」
「身体に悪いって思って」
だからだというのです。
「止めたんだよ」
「そうなのね」
「うん、その前の日はウイスキー一本開けてて」
「その日はワイン二本」
「結構飲んでるよね」
「まあそれはね」
「身体によくないから」
飲み過ぎは、というのです。
「だから止めたんだよ」
「いや、だから」
「だから?」
「バーで一杯位ならいいじゃない」
サラはかなり具体的にです、先生に言いました。
「それは普通だから」
「バーで飲む時は」
「そう、それが主題じゃないから」
「あれっ、バーはお酒を飲むところだよ」
先生はサラの今の言葉にきょとんとして返しました。
「それで主題じゃないって」
「兄さん、その歳でもわからないのね」
サラは先生にさらに呆れるのでした。
「全く、困ったことね」
「困ったことって」
「そうよ、それでタクシーを呼んでよね」
「帰ってもらったんだ」
「紳士ではあるわ」
サラは腕を組んでまた言いました。
「それは」
「うん、いいことだね」
「それ自体はね」
サラの肯定は一定のものでした。
「その通りよ」
「やっぱり女性の夜の一人歩きはよくないわ」
「女性は大事にしないとね」
「僕もそう思ってね」
タクシーを呼んだというのです。
「呼んだんだよ」
「それ自体はいいのよ」
「何か引っ掛かる言い方だね」
「そうした感じで言ってるのよ」
実際にそうだと返すサラでした。
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