第十二幕その七
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「何かと」
「イギリスではインクをかけているのかと言う人もいますよ」
「あっ、わかります」
「そうですよね、黒いですから」
「ですから墨なのです」
まさに黒いからです。
「烏賊の」
「そうですよね、ただ」
「ただ、ですね」
「こんな美味しいものを知らなかったことは」
先生はとても残念そうなお顔になって日笠さんに答えました。
「不幸でした」
「こんな美味しいものをこれまで食べなかったことが」
「残念でしたので」
「そうですね、実はそれは日本もです」
「イカ墨のスパゲティを、ですか」
「スパゲティは明治の頃に入ってきましたが」
それでもというのです。
「長い間。イカ墨のスパゲティはありませんでしたし」
「それにですか」
「オリーブオイルもです」
これもなかったというのです。
「このお店はオリーブオイルが抜群にいいのですが」
「そのオリーブオイルもですね」
「長い間日本にはなかったのです」
「何と、それは」
「残念なことですね」
「そう思います」
先生はそのイカ墨のスパゲティを食べつつ少し驚いて応えます。
「やはり。パスタにはです」
「オリーブオイルですね」
「ガーリックもですね」
「若しかして」
「はい、パスタにガーリックを入れることもです」
見ればお二人のスパゲティには大蒜も入っています、それがパスタの味をさらによくするのです。ですがその大蒜もというのです。
「長い間」
「ううむ、では日本のスパゲティは」
「長い間こうしたものではなかったのです」
「オリーブオイルもなくガーリックもなく」
「上にチーズをかけたりすることも唐辛子を利かせることも」
そうしたこともというのです。
「なかったのです」
「そうだったのですね、では」
「洋食のスパゲティでした」
「イタリア料理ではなく」
「また別のものでした」
「そうなのですね、しかし」
「しかしですね」
「そちらのスパゲティも美味しそうですね」
先生はそのオリーブオイルや大蒜を入れない洋食としてのスパゲティについてもこうしたことを言ったのでした。
「あのナポリタンやミートソースですね」
「そうです」
「僕はどれもオリーブオイル、そしてガーリックを使っていますが」
「イタリアの様にですね」
「そうです、しかしそちらもいいですね」
「では」
「一度食べてみます」
先生は日笠さんにこう答えました、そしてイカ墨のスパゲティにです。
フェットチーネやマカロニ、ラザニアも食べました。食べたものはパスタ類で飲むものはワインでした。そうしたものを楽しんでから。
デザートになりました、そのデザートはというと。
「ジェラートですか」
「イタリア料理なので」
それでと答える日笠さんでした。
「
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