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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
6.羽ばたく時を信じて
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ミイズミ師匠!でも、それでも悔しい物は悔しいんです!!」
「ふむ、ならばまずはこの私から一本取ってみる事だ。そうすればブレイブも君の事を認めざるを得ないさ」
「……それが出来たら苦労しないっちゅーの」

 不満そうに小声でぼそりと呟く。気楽に言うな、とでも言いたげだ。
 カミイズミが言っていることは尤もなのだが、イデアは理不尽な思いを抱かずにはいられなかった。その原因は、もちろんカミイズミにある。

 ノブツナ・カミイズミ。またの名を『剣聖』カミイズミ。
 エタルニア公国軍第一師団『黒鉄之刃』が師団長にして、『ソードマスター』のアスタリスク所持者。それが、イデアの目の前に立ち塞がる壁だった。

 元帥ブレイブが唯一絶対の信頼を置く旧友にして、文字通り国内最強の剣士なのだ。彼から一本取れる人間など、エタルニア中を探しても片手で数えるほどしかいないだろう。
 アナゼルやエインフェリアは一本取ってないのになんであたしだけ!と聞きたくもなるが、口で負けるのは明白なので余計に悔しかった。そんな不満げな彼女を眺め、カミイズミはくつくつと笑う。

「どうする?怖気づいたならば日を改めて戦っても構わないぞ?」
「………訓練の結果は、まだ出てません!!」
「その意気やよし!!」

 不撓不屈。彼女に最も似合う言葉だった。
 イデアは、それまで片手で振るっていた剣を両手で握り直した。片手では片手分の威力だが、両手なら両手分の威力。その分動きにくくはなるが――失敗を恐れていては前へ進めない。

「でりゃあああああああああッ!!」
「むっ!?」

 次の瞬間、カミイズミも驚きの声を漏らすほどに深い踏込みと共に、イデアの刃が一直線に迫ってきた。先ほどとは比べ物にならないほど速く、そして迷いがない。これは受け流しきれないと判断し、カミイズミは真正面から斬撃を受け止めた。
 ガキィィィンッ!!と、金属同士のぶつかり合う音が周囲に響く。

「この太刀筋……さてはハインケルから両手持ちの技を盗んだな?それも、刀用に自己流アレンジか……付け焼刃だが、よい勢いだ」
「くぅッ……このっ……!!」

 涼しい顔で剣を押し返すカミイズミ。イデアの攻撃は会心の勢いだったが、カミイズミはそれを受け止めたうえで彼女を正面から押し返している。彼の本来の戦い方ではないが、それでもこの実力差だった。やがて、力負けしたイデアの刀は大きく弾かれ、剣が手を離れた。

「ああっ!?」
「そこまでだ」

 放物線を描いて床に突き刺さったイデアの剣がその勝敗を物語る。

「勢いは良かったが、もっと技を身につけなさい。どうせ人相手に使うのは初めての戦法だったのだろう?だが、両手持ちは防御が薄くなる代わりに女性の細身でも十分な威力を出せるメリットがある技術だ
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