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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
6.羽ばたく時を信じて
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証拠に、今日ステイタスを確認すると二人にスキルが発現していた。

 ベルが発現したのは「憧憬一途(リアリスフレーゼ)」。
 憧憬とはすなわち憧れであり、この場合彼の憧れが(アイズ)に向いているのか雄姿(リングアベル)に向いているのかは分からない。案外どちらにも向いているのかもしれないが……今のベルは、その憧れの思いが強ければ強いほどに成長率がハネ上がる状態にある。

 同時に、リングアベルのスキルは「火事場力(サモンストレングス)」という力だった。
 こちらはいつも涼しい顔をしているリングアベルには似合わず、身体が動かないほどの大ダメージを受けた時にだけ攻撃力と防御力が激しくブーストされるという泥臭い効果だ。普通に戦う分には何の意味もなく、瀕死に到った時だけ意味があるという有り難いのかどうか全く分からない力である。一応ピンチの時に生存率が上がるが、冒険者ならば死なないように戦うべきだろう。

 ベルの能力は危険だ。
 想いがある限り急激な成長が望めるこのスキルは特殊かつ希少すぎる。このスキルの存在を知れば、欲深で傲慢な神々は必ずベルを自分の玩具にしようと動き出すだろう。
 ――だから、これは本人さえも気付かないように「暗黒雲海」同様見えないように消しておいた。何れはその成長速度の速さから事実が露呈するだろうが、一先ずの時間稼ぎは出来る筈だ。

 反面、リングアベルのスキルは普通に戦っている分には露呈することはないだろう。今回のステイタス更新でリングアベルの能力値は一部がBランクに達した。彼は十分強いし、多少強い相手に勝っても不審には思われない。加えて彼はアスタリスク持ち疑惑があるので、そっちの方に意識が流れてくれるはずだ。
 ……というか、今までリングアベルは可能な限りステイタス更新を避けていた。
 その理由は実にシンプルで……

『……待て、女神ヘスティア。そのステイタス更新とはやるたびにそうして指から血を出さねばならないのか?』
『そうだけど?ファミリアとは神との契約な訳だからねぇ……よその神様に勝手に弄られないようにボクの血にしか反応しないようになってるんだよ?』
『了解した。ならば俺はステイタス更新を極力避けさせてもらう』
『え?そりゃまたどうして……』
『自分の為に女性に血を流させる男など、最低だ……』
『ええー………』

 ヘスティアには全く分からない感覚だが、彼の矜持に引っかかったらしい。以降、彼は今日にいたるまでステイタス更新の話題に触れさえしなかった。たぶん、優しいのだろう。とてもとても優しくて、その優しさの為に自分の痛みを仕舞い込めるような男なんだろう。

 だからこそ「火事場力(サモンストレングス)」などというダメージ前提のスキルを『持っていた』のかもしれない。

(このスキル……
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